2019-10-16

整形外科ローテーションの紹介 整形外科における身体所見

「身体所見」は視診・聴診・打診・触診と教科書には書いてあります。これは基本ですが、科によってその中で明かに比重が異なります。整形外科はやはり、触診です。具体的にどうやって診察するのかという質問を研修医からたびたび受けます。整形外科は当院では選択科目であり、全員に教えるということはできないので、今回は整形外科における身体所見の基本について、少し話をします。私自身、教科書ではなく、医者になってから整形外科領域の身体所見を学び、自分の中で体系化しています。

基本は「視診・Range of Motion (ROM)・圧痛・(スペシャルテスト)」

視診:発赤、腫脹、変形、創部の観察など見た目の異常です。
ROM:膝など関節の訴えがあればその関節のROM、下腿や上腕などであればその隣接関節のROMを診察します。表現の仕方ですが、屈曲しよう(させよう)としてその限界の角度を測定し、自動屈曲(他動屈曲)〇〇度のように標記し、必ずその逆も標記します。膝や肘なら伸屈曲のみで十分ですが、股関節や肩関節は内外転、伸屈曲、内外旋など多岐にわたります。運動時痛があれば、そのときにわかります。自動運動と他動運動で大きな違いがあれば、それも重要です。

圧痛:「触診」のなかでもっとも重要な項目です。筋肉が痛いのか、骨が痛いのか。細かく押します。骨折の診断において骨に痛みがあるのかは非常に重要です。触診なので熱感などもここで診察します。
(スペシャルテスト):Speed、Empty can、マックマレー、トンプソンなど聞いたことがあるテストは多くあると思います。四肢すべて集めると軽く100は超えるのではないでしょうか。ただ、これは研修医には正直不可能と思っています。非常に微細な所見をみて陽性か陰性か判断するため、経験がかなり必要となります。整形外科をローテーションした研修医にはスペシャルテストがいかに難しいかを肌で感じることができると思います。

私は研修医に視診・ROM・圧痛をカルテに明記できれば合格と常々いっています。スペシャルテストはそれこそ、専門(指導医)に任せれば良いのです。とはいえ、圧痛やROMも経験を要します。残念ながら、四肢の異常を患者さんが訴えても、何を診察すればわからずに身体所見に「疼痛」だけが記載されているカルテも見受けられます。そうやって思考を停止させず、最初は上手くできなくても「視て、触る」をやりつづけることです。そのいう小さな経験を積み重ねることが正確な診断への近道だと思っています。

整形外科 相澤