ドクターヘリのOJT

はじめまして。2年目の江原と申します。今回はドクターヘリOJTについてご紹介したいと思います。
 
 OJTとはOn the Job Trainingの略であり、つまりドクターヘリ実地研修のことです。当院は道央ドクターヘリ基地病院であり、道内最初にドクターヘリ正式運航を開始した老舗でもあります。救急科ローテーション中には希望すればOJTを行うことが可能であり、今回はその様子をお伝えできればと思います。 
 
 朝フライトスーツに着替え、8時15分からブリーフィング を行います。ブリーフィング では、医師、看護師、機長、整備士、コントロールセンターと医療機材、無線、天候などをチェックし、情報を共有します。天候や日照時間は、運航範囲にも影響します。また、出動した後の機材トラブルは致命的になるため、入念にチェックを行います。

 朝のブリーフィングが終わると、出動要請がかかるまで待機します。ERの混み具合にもよりますが、基本的にフライトに当たる医師はERや病棟業務には従事せず、要請があればすぐ出動できるよう待機します。要請がかかると医師、看護師はヘリポートへ全力疾走し、数分以内に離陸します。そのため患者情報、現地の救急隊の活動状況などは上空ではじめてわかることになり、限られた情報だけを頼りに着陸後に行う処置、搬送などの流れを考えながら機内で準備を進めなければなりません。

 現場に着陸すると救急隊と合流し、迅速に患者さんの状態把握と必要な処置を行い、搬送先を決定します。ドクターヘリの機内は狭く、必要な処置は離陸前に現場で済ませておく必要があります。搬送中はエンジンやプロペラの騒音で患者さんの声が一切聞こえないため、患者さんとモニターから目を離すことができません。また、院内と違って限られた機材しかなく、日照時間との兼ね合いなどから現場での活動時間も限られている場合が多いため、診察や処置より搬送が優先される場面も少なくありません。搬送先は、患者さんの重症度や搬送時間、ベッドの空きなどから総合的に判断します。搬送先に到着次第直ちに申し送りを行い、終了後すぐに帰院して次の要請を待ちます。1日多くて4、5回出動することもあります。運航時間は日没に合わせ夏季は18時、冬季は16時に終了となります。運航が終了するとその日の活動について振り返りを行い、改善点を共有します。

 OJTは、bystanderではなくチームの一員として活動しなければならないため、非常に緊張感があります。また、医学的観点だけでなく、搬送も含めた総合的な状況判断能力がフライトドクターには必要であると感じ、非常に勉強になりました。当院では初期研修期間中にプレホスピタルの最前線を学ぶことができますので、特に救急医療に興味のある方は、見学の受け入れが再開となった際にぜひ一度当院にいらしてください。