2024-08

手稲家庭医療クリニック(通称「かりんぱ」)のローテーション

医学生の皆さん、こんにちは。PGY2 チーフレジデントの樋口です。

本日は学生の方も気になっているであろう、手稲家庭医療クリニック、通称「かりんぱ」のローテーションに関してお話ししたいと思います。「かりんぱ」は、渓仁会本院から徒歩10分の場所にある、渓仁会を母体とするクリニックです。ちなみに「かりんぱ」はアイヌ語で「桜」を意味する言葉です。春になると美しい桜の風景が広がる軽川の近くに位置しています。

基本家庭医療科の医師が所属していますが、クリニックは内科、小児科、産婦人科を標榜しており、成人の内科的な診察だけでなく、1歳未満を含む軽症の小児の診察や、経膣エコー等を用いた婦人科診察をおこなうこともできます。

また、「はまなす」という訪問看護ステーションも併設しており、訪問診療もおこなっています。

かりんぱローテーションは、外来研修の一環として選択が可能です。同じ渓仁会グループの施設ですが、common diseaseにたくさん触れられたり、訪問診療を体験できたりと、渓仁会本院での研修とは違った学びを得られます。

・1日の流れ(2024年5月現在)
8:40-8:45:朝礼
ここで連絡事項が共有されます。初日や最終日は簡単な挨拶をします。
8:45-11:30:午前の診察
研修医は輪番(定期外来ではない外来)を担当します。輪番は発熱とそれ以外に分かれており、どちらもcommon diseaseをたくさん診ることができます。患者の受付は11:30で終了ですが、診察は続くことが多いです。
午前の診療終了-13:30:昼休憩
この間に昼食をとります。
13:30-16:00:午後の診察
午前と同じ要領でおこないます。
17:30ごろ:1日の振り返り
その日の指導医と振り返りたい症例や疑問などを共有し、他の医師とディスカッションします。木曜日のみ午後休診で、午後に多職種で勉強会をおこないます。時々訪問診療について行くこともあります。(希望すれば複数回同行できるかも?)

・多職種勉強会
前述の通り、毎週木曜日の午後は休診なので多職種で勉強会をします。毎週違ったテーマを扱います。私がローテーションした際は、インスリンやGLP-1受容体作動薬の自己注射を、実際に練習キットを使用してやり方を学んだ会がありました。意外と薬剤によって器械の形状や、使用方法が違うことを初めて知りました。自己注射のやり方を知っておくことで、訪問診療の際にお手伝いができたり、薬剤選択の際により患者個々人に合った選択が可能になると思いました。

他にも、当院で初期研修をされたアメリカ留学中の家庭医療科の先生が一時帰国されていたので、お話を伺う会もありました。アメリカと日本の家庭医療の違いなどを知ることができました。
また、訪問診療患者の治療方針についてディスカッションをおこなうこともありました。

・かりんぱの魅力
かりんぱに関してざっと説明をさせていただきましたが、ここからは私個人が感じたかりんぱの魅力について説明します。
①多くのcommon diseaseを経験できる
渓仁会本院でもNF(ナイトフロート)といった必修の救急外来研修はありますが、かりんぱでは更に多くの症例数を経験することができ、さらにそのほとんどはcommon diseaseです。感冒や生活習慣病等を外来でたくさん経験でき、大変勉強になります。感冒や生活習慣病等を外来でたくさん経験でき、大変勉強になります。
common diseaseを外来でフォローしながら治療していく、例えば健康診断で高血圧を指摘された患者が来院し、緊急の降圧対象でなければ生活指導をし、血圧手帳をお渡しし日々の家庭血圧を測定してもらい、後日フォローして治療方針を決めていく、こういった本院で経験することが難しい流れを経験できるのは、家庭医療クリニックであるかりんぱならではの魅力と言えます。

②教育体制が整っている
かりんぱでは多くの症例数を保ちながら、さらに教育の質も担保されています。毎日上級医の中から指導医が決められており、研修医は患者を帰宅させる前に、原則全例指導医に相談する必要があります。ここでショートプレゼンの練習ができ、また問診や診察のフィードバックをしていただけたり、方針のディスカッションをすることが可能となります。自信がない主訴だった場合、診察前に診察の流れを打ち合わせすることも可能です。私自身も相談することで不足していた部分に気づくことが多々ありましたし、すぐに相談可能なのは非常に安心感がありました。
また前述した通り、1日の終わりに指導医と外来を担当した医師達で振り返りをおこないます。ここで些細な疑問が解消できたり、他の医師が診た症例からも学ぶことができ、大変勉強になります。

③職員さんが皆とても優しい
私自身、外来診療にあまり慣れていなかったため最初はわからないことが多かったのですが、コメディカルやクラークの方々が非常に優しく、わからないことはなんでも教えていただけて、診療の手助けをして下さったのでスムーズに診療をおこなうことができました。
本院とは違う職員さんなので初めての方がほとんどですが、職員さんが優しく仕事がしやすいのも、かりんぱの魅力の一つだと思います。

・最後に
以上、手稲家庭医療クリニック「かりんぱ」での研修を紹介させていただきました。
もちろんかりんぱの見学も可能なので、興味があればぜひ一度当院へ見学にお越しください。
ぜひ当院で研修をして、学びの多いかりんぱでの外来研修を選択してみてください!

※執筆時点(2024.5現在)の情報です
SNSチーム

UTMB研修 〜後編〜

こんにちは!
手稲渓仁会病院PGY2の川口です!
当院では2年生時のローテーション1ヶ月で、アメリカはThe University of Texas Medical Branch at Galveston (以下UTMB)に行くことができます!
今回は、先陣を切って4月にアメリカ研修に行かれた、PGY2岩本先生、桐生先生のインタビュー【後編】をお届けします。

川口 : 日本との違いは感じましたか??あれば具体的に聞きたいです!

岩本 : 患者リストには、各患者さんが入ってる保険の名称も記載されていて、治療方針を立てる際にその保険がカバーされてるかを都度確認していました。

桐生 : アメリカでは、さまざまな人種・民族の患者さんが異なる宗教や価値観のバックグラウンドを持っていて、同じ疾患でも皮膚の色調によって皮膚所見が異なって見えたり、治療法について宗教的な配慮が必要だったり、日本ではなかなか出会わないような症例に触れることができました。例えば、イスラム教の患者さんにステロイド注射をするという話になった際、「ラマダーン(断食)中であり、日が出ている間に栄養のあるものを摂取してはいけないことになっているが、ステロイド注射には栄養となる成分は入っていないのか」という質問をされて上級医と一緒に調べるという、非常に興味深い経験ができたのもそのひとつです。

川口 : 初めてのアメリカ生活だったと思います、、、何か大変なことはありましたか??

岩本: やはり圧倒的に英語がわからなかったですね。仕事で使う英語は段違いに難しく、笑い話ですが、現地のレジデントに患者さんの家族を待合室まで呼びに行くように言われて、連れてきた人が全然関係のない人だったことがありました(笑)。 ただ向こうに行って、非ネイティブ話者でも英語を話せれる人だらけの環境の中で時間をかければ、誰でも外国語はマスターできると思いました。僕も今から頑張っていきます!

桐生 : アメリカではどこに行くにも距離が遠く、公共交通機関も日本ほど便利ではないので、移動が大変でした。滞在中はUTMBの近くのアパートを借りて生活していたので通勤に際してほとんど支障はありませんでしたが、関連のクリニックに行く際や週末観光に行く際などは、送ってくれる友達を探すかUber/Lyftを利用していました。もう一つ大変だったのが食生活です。元々ハンバーガーやピザなどの所謂アメリカンフードは好きな方ですが、1ヶ月も暮らしていると生魚やお浸しなど日本食が恋しくなりました。現地の鮮魚市場でサーモンを買って塩焼きにし、現地で手に入れたカリフォルニア産の白米と日本から持参したインスタント味噌汁と一緒に食べた時は、二人とも望郷の念が込み上げていました。

川口 : 楽しかったことは何ですか?

岩本 : 自分がminorityながら、現地で新たな友達を作ることができて、それはすごく嬉しく、楽しかったことです。引き続き良好な関係を保てられるように努力していきたいです!

桐生 : さまざまな場面で現地の先生方もこのTKHとのパートナーシップを大事にしてくれているのを感じ、お互いにもっとこの繋がりを強くしていきたいといった熱い話をしている時間が楽しかったです。まだ我々は医師として駆け出しであり、世界に与えられるインパクトは小さなものかもしれませんが、それでもいつかそれぞれが各々の道で世界中で活躍するようになった時に、TKH-UTMB familyとして手を取り合い、世界をより良いものに変えていけるような、そんな素敵なパートナーシップになっていくことを願っています。


左から岩本、Dr.Farr、桐生

川口:今回のインタビューは以上です!お二人もと素敵な経験をアメリカでされてきたのですね!!:ワクワクハート:これからも研修医たちのUTMB研修のブログを載せていこうと思っているので、皆様ぜひ楽しみにしていて下さい!!では!!