研修

家庭医療外来研修の魅力

みなさま、こんにちは。研修医2年目(PGY2)の奥山由梨佳と申します。今回は、手稲渓仁会病院との連携施設である「手稲家庭医療クリニック」での外来研修についてご紹介します。

手稲家庭医療クリニック(通称・かりんぱ、アイヌ語で桜のこと)は、春になるとこんなにも美しい風景が広がる軽川(がるがわ)のすぐそばの診療所です。


写真① 軽川の風景

そもそも家庭医療とは、「病気を抱える人を、その臓器だけでなく、その人全体や家族背景まで巻き込んでみる」医療です。言わば、臓器ではなく「人間そのもの」を専門とする医療です。そのため、かりんぱでは0歳児から高齢者まで「よくある疾患」を幅広く診ます。

かりんぱは、全国でも屈指の家庭医療の教育施設のひとつです。外来研修では、研修医は輪番外来担当として、予約のない患者さんの診察を担当します。私がローテした4月期は、コロナの流行真っ只中。そのため、圧倒的大多数の主訴が咽頭痛、診断はCOVID-19が大半を占めていました。しかし、その中に5 killer sore throatが紛れ込んでいることがあるので、注意が必要でした。

また、かりんぱでは高血圧症の方の初診から関わることができます。まずはじめに取るべき問診、身体診察、そして検査を経て、その人に何の治療が適切かを判断します。そして、降圧薬の開始やコントロールも経験します。

このように、よくある疾患について経験を重ねることができるのはもちろんのこと、ベテラン指導医から直接フィードバックを受けることができるのが、かりんぱローテの最たる魅力です。マネジメントのコツや、患者さんのご家族や社会背景にまで注目したアセスメントを学ぶ機会は貴重です。そして、業務終了後には外来担当医が集い、その日の症例の振り返りを行います。


写真② 外来での振り返り風景

教育を重視した外来研修ができる、それがかりんぱローテです。学生さんでも見学できるので、かりんぱの教育に少しでも興味がある方は、ぜひ見学にお越しください!

PGY2 奥山由梨佳

TKHマンの美幌外来研修

医学生A「初期研修で外来研修が必須になったって聞いたんだけど、ぶっちゃけよく分かんなくない?」
医学生B「てか、どこで研修しても同じじゃない?」
医学生C「それな」

皆さん、こんにちは。TKHマンの中の人ことPGY2の千田です。今回は、2020年度採用の初期研修医から必修になった外来研修について、当院の研修先からご紹介します。

当院に興味を持たれている方の中には、同じ渓仁会グループに属し、総合診療専門医を目指す後期(専門)研修先として人気の手稲家庭医療クリニック(通称かりんぱ)をご存知の方もいらっしゃるかと思います。

今まで外来研修は任意だったため、希望者のみがかりんぱをローテしたり、週1コマの定期外来を持たせてもらったりしていました。全員がローテする今年からは、かりんぱに加え協力施設に加わってくださった美幌町立国民健康保険病院や、あさひ町南大通クリニックなどから選択する形になりました。今回私は当院のトップバッターとして秋の美幌に行ってきましたので、その魅力を余すところなくお伝えできればと思います。

美幌町は手稲から車で6時間、北海道の反対側に位置する人口2万人の小さな町です。国保病院はそんな美幌町内で99床を擁する唯一の総合病院で、隣の大空町、津別町からも患者さんを受け入れています。

研修では内科系4名、小児科1名の先生方から指導を受けながら、一般外来、救急外来、訪問診療を経験することができました。緊急疾患の除外に重きが置かれる普段の救急外来とは違い、一般外来では困っている患者さんに向き合い、寄り添った診療を行うことが必要です。心身機能の加齢性変化に伴い感情面が不安定だったり、治療の希望を吐露される高齢患者さんも多くいらっしゃり、一般外来・地域医療の難しさやコミュニケーションの大切さを改めて知ることができました。

周囲に病院がない状況では、良い意味でも悪い意味でも「たらい回し」が起こらず、患者さんは説明に納得がいかなかった場合や薬が効かなかった場合など、何回でも再診されます。風邪や胃腸炎のようなありふれた疾患でも、患者さんに正しく説明し、理解してもらうことは意外と難しいのだと身に沁みて感じました。逆に適切な治療をした患者さんがフォローアップの診察に笑顔で帰ってくる瞬間からは、これまでの研修ではなかった達成感や満足感も味わえました。

国保病院では、初めて患者さんの高次医療機関への転院搬送も経験することができました。最寄りの高次医療機関まで車で30分という環境の中で、手に余る症例の見極めを適切に行う難しさを痛感しました。自分自身は手稲渓仁会病院を含め、今後もしばらくはいわゆる「頼られる病院」で勤務を続けると思いますが、「お願いする側」を知ることができたことは、今後のためにも非常に良かったと思います。

真面目な話はさておき、美幌研修では北海道の自然の豊かさ、人間の温かさを感じることも多くありました。
津別峠から美しい屈斜路湖の日の出と雲海を見たり、

車で1時間ちょっとの知床を見に出かけたり、

写真はありませんが、副院長先生宅で自家製野菜をふんだんに使った鍋パーティーに参加させてもらったり。

短い期間でしたが、美幌での経験は初期研修の思い出として自分の心の中に強く残り続けると思います。

手稲に戻り、原稿執筆時点で私の北海道生活も残り3ヶ月となりました。いよいよ本格的に雪の季節。研修もオフのウィンタースポーツも目一杯楽しんで、充実した2年間だったと胸を張って東京に帰りたいと思います。皆さんも是非、充実した研修や人との出会い、豊かな自然に恵まれた当院の見学にお越しください。

PGY2 千田

TKHマンの動画をご覧になりたい方は こちら から(事務局)

渓仁会におけるコメディカルの方々との関わり

はじめまして! 手稲渓仁会病院PGY2の近藤です。今日は当院の研修の魅力のひとつであるコメディカルの方々との関わりを紹介したいと思います。

このブログの読者のみなさんは医学生の方が大半だと思いますが、医師国家試験ではコミュニケーションを直接問われることは少ないかと思います。しかし、実際に働き始めると、他職種とのコミュニケーションなくして僕たちの仕事は成り立ちません。当院ではコメディカルの方々との距離が非常に近く、一緒に働く中でとてもたくさんのことを教えていただいていると常に感じます。その一部を紹介します。

職種ごとに例を挙げると、管理栄養士の方は患者さんにとってより良い栄養や食事がないかを考え、多くのアドバイスをしてくれます。薬剤師さんは患者さんにとって良い薬剤の選択や、当院で採用がない薬の処方の仕方などを細かく丁寧に教えてくれます。リハビリのPT、OT、STさんは患者さんのリハビリを行ってADLを維持するだけでなく、患者さんと長い時間接することで、些細な変化にも気づき、その変化を教えてくれます。事務の方は迅速にさまざまな書類仕事をこなし、診療が円滑に進むようにサポートしてくれます。また、検査技師さんは検査のモダリティに関してのアドバイスや、検査結果に関しても解釈の仕方などを教えてくれます。そして、看護師さんは僕たち研修医以上に長い時間患者さんに寄り添い、患者さん一人ひとりの状況を把握し、逐一必要なことを教えてくれます。

また、何より思うことは、当院で働く人たちはとても友好的に接してくださる方が多く、どの職種の方とも非常に働きやすい環境であることです。何を聞いても、嫌な顔ひとつせず(内心忙しいときには嫌がっているのかもしれませんが)教えてくださいます。ここ1年ほどで得た知識の多くは、コメディカルの方から教えていただいたことだと思うくらい、当院のコメディカルの方は知識も豊富で、人間性もすばらしい方が多いと感じます。他院で研修をした先生も、当院が一番働きやすい病院だと言っていましたが、実際に働いていて人間関係で困ることはないと言っても過言ではないと思います。

また、当院の特徴のひとつとしてNight floatというローテーションがありますが、そのNight floatの昼の時間を生かして昼間に各部門(例:細菌検査室、栄養部、薬剤部など)を見て回ることができます。そうすると、各部門の方がどのようなことを研修医に求めているのか、直接肌で感じることができます。非常に魅力的な時間です。

以上、当院におけるコメディカルの方との関わりとご紹介しました。COVID-19の流行が続いていますが、ぜひとも一度当院へ遊びに来てください!

当院での救急科研修について

手稲渓仁会病院救急科の小野寺俊幸と申します。

当院の救急科の特徴を簡単にお話します。
札幌市の3次救急医療体制を担う救命救急センターは5つあり、そのうちの1つが当院となります。札幌を中心とした道央圏のドクターヘリ基地病院でもあり、令和2年救命救急センターの評価において、北海道で唯一のS評価を得た救命センターです。

対外的な評価はさておき、救急科研修の実際はどのようなものでしょうか。

当院の救急科研修は救急車で搬送されてくる患者さんの外来診療がメインになります。救急外来Walk inについてはNight floatが主に担当しますので、今回は割愛させていただきます。

統計的には、2020年1-12月で約5900件の救急搬送数、その中で三次救急は415件、当院へ搬送されたドクターヘリは227件、平均して1日24時間で約16.2件の救急搬送、約1.1件の三次救急、約0.6件のドクターヘリ搬送を経験することになります。その中の全てを担当するわけではありませんが、軽症〜重症まで幅広く経験し診療を実践することが救急科研修の目的です。

多発外傷症例や、他の病院では経験することができない重症症例や他の病院では対応できず転院搬送となる症例を経験する機会がたくさんあり、重症対応ではチーム診療の一端を担うことになります。やる気と診療経験のある研修医であれば、重症症例マネジメントを任されることもあります。軽症〜中等症症例のほとんどは研修医主導で初療にあたります。症例ごとに必ず救急科スタッフと確認・ディスカッションして、方針を決めながら診療を行います。

救急外来の混雑具合にもよりますが、空き時間をみて症例ごとのフィードバックを行うようにしています。正直なところ外来診療で手一杯になっていることが多く、なかなか教育まで手が回る時間がないこともありますが、研修医からの疑問・質問が積極的にある場合は、我々も積極的に時間を作って教育を行うように努めています。

また、研修医を対象としたMorning reportでも、救急科からは「ERでの外傷診療」や「中毒」、「熱傷」、「凍傷」、「低体温」などの講義を行ったりしています。

その他には、以前の研修医ブログでもあったOff the job training(実際はOn the jobとなることが多いですが)としてドクターヘリやラピッドレスポンスカー同乗による病院前診療を行う機会があります。

PGY2以上で積極的に病院前診療を希望する研修医が対象になります。
救急科研修に限らず、色んな分野での積極性を持って研修を行うことでたくさんのことを学んでほしいと思います。

以上、当院での救急科研修のご紹介でした。

小児科初期研修の紹介

はじめまして。小児科の西迫です。臨床研修部で研修医の指導やEPOC2(卒後臨床研修医用オンライン臨床教育評価システム)関連に携わっています。
今日は当院小児科の初期研修の紹介です。

小児科研修は、1ヶ月の必修枠となっており全員が1年目に回り、研修の主体は小児科の病棟患者診療となります。医師になりたての立場で小さいお子さんの診察や手技を行うことに戸惑うかもしれませんが、チーム(指導医−専攻医−研修医)体制で指導となり基本的には単独での判断や、手技を行うことはほぼありませんので安心して臨んでください。

当院小児科の特色をいくつかご紹介しましょう。

①研修医向けの講義が豊富
昼の時間を使って専攻医を中心に担当する講義(ヌーンレクチャーなど)を行っています。講義の内容としては、小児に関する診断、治療学(初期診察、BLS、輸液など)、小児疾患・症候(気管支喘息、けいれん、)に加えスタッフからのコアレクチャーやBLSのシミュレーションも行っています。また、毎週1回の英語プレゼンテーションと月末の論文抄読会、症例発表の機会もあります。

②小児救急、小児集中治療の症例数が多い
当院小児科は今年こども救命センターを開設しました。病院間搬送チームによりドクターヘリ搬送も含め全道からの重症患者を受け入れており、救急外来での初診からICUにおける集中治療管理、post-ICUケアを行なっています。さらに集中治療学会専門医3名、日本麻酔学会認定医2名、AHA PALSインストラクター3名という市中病院ではほぼ全国でも類を見ないスタッフがそろっています。初期研修医中にICUで直接患者を受け持つことはありませんが、入院時や特に高度デバイス導入時などは、積極的にこちらからも誘ったうえで参加してもらっています。

上記以外に小児外来診察、NICUでの新生児診療、健診、予防接種も希望に応じて研修を行うことができます。開始時のオリエンテーションで目標設定が可能ですので、是非積極的に希望を伝えてください。

札幌は7月が最も過ごしやすく、街も美しい季節です。病院周囲の街中でも美しい風景はたくさんみつけることができますので見学の際はお楽しみに。朝晩はまだ肌寒く上着一枚の準備を忘れずにお越しください!

小児科 西迫(臨床研修部担当)

当院卒業生の朗報

みなさま、こんにちは。臨床研修部です。
今年度もどうぞよろしくお願いいたします。

桜の開花はまだまだ先の北海道の春ですが、このたび大変嬉しいニュースが届きましたのでご案内いたします。当院の初期研修出身で、現在専攻医の2名の進路が、下記のとおりアメリカの研修プログラムに決定しました!

まず1人目は、外科専攻医2年目の塚越隼爾先生です。医学生の頃から米国における心臓血管外科の研修を強く希望していました。今回、University of Texas Medical BranchのVascular Surgery Residency Programにマッチし、7月からプログラムを開始される予定とのことです。

憧れの塚越先生(左)と最後の記念撮影をする後輩原田先生(右・PGY1) ※5/14撮影

2人目は、救急科専攻医3年目の福田茜先生です。Texas Tech University Health Science Center El Pasoにマッチし、3年間救急Residency Programの一員として勤務されます。その後は、そのままフェローシップに進む予定で、福田先生からは『当院で同じような夢に向かって働ける仲間に出会えたことについてとても感謝している』とのコメントをいただいいております。

海外留学や海外で働きたいという夢を抱いている研修医が当院には多く在籍しており、今回のように実現している方もいます。当院では、英語でのレクチャーやOSCE、Case Western Reserve Universityへの留学支援等も行っており、多様な経験をお持ちの先輩や指導医からもさまざまなアドバイスを得られる機会がたくさんありますので、ぜひ一度見学に来ていただければ幸いです。

ナースプラクティショナーがいる生活 Part.2

はじめまして、手稲渓仁会病院初期研修医2年目の金谷和哉です。
みなさんはナースプラクティショナー(NP)という言葉を耳にしたことはありますか?もしはじめて聞いたという方は、普段このブログを読みこんでいませんね?(笑)。読んでいない方は、今年7月21日の池田先生のブログ記事で触れられているので、そちらもぜひご参照ください。

当院総合内科ではNPを活用しており、全国的に見ても非常に先進的な研修病院です。本格的にNPが医師チームに加わり、患者診療にあたるようになったのは今年の7月から。今後、ますます磨きがかかっていくことでしょう。今回、NPがチームにいるメリットを具体例を交えながら、研修医目線でさらにお伝えします!

先日、重度認知症を背景とし、慢性的な便秘から尿閉に至った80代女性患者さんを受け持ちました。医学的には外来でもフォロー可能な状態でしたが、ご家族は介護疲れで疲弊していたことから入院を選びました。下剤の使用で排便が得られ、自尿も認められるようになり尿閉も解除したため、入院後1週以内にはいつでも退院できる状態まで改善しました。しかし、そのあとに退院先を自宅にするのか長期療養型病院にするのか、長期療養としてはどの病院が最適かなど、社会的な調整に時間を要し、最終的には1カ月間の入院が必要でした。その間、医学的な介入はほぼ不要な状態であっても、さまざまな調整で時間を取られてしまうことがあります。そういった慢性期の管理・調整を引き受けてくださるのがNPです。実際今回のケースも、入院期間の2/3程度はNPに担当いただくことができたおかげで、私は手の空いた時間を使って他の迅速な対応を求められる患者さんの診療に専念することができました。

他にも、誤嚥性肺炎治療後で転院待ちとなった患者さんや、菌血症に至った尿路感染症で全身状態が安定し規定の日数の抗生剤加療を続ける患者さんなど、急性期の管理が落ち着いた患者様をたくさん引き受けていただくことによって、われわれ研修医は新規の入院患者さんを担当することができ、より効率的にたくさんの症例を経験することができるようになりました。病態によっては、NPへ担当を引き継いだ患者さんが急変し、再び医療的な介入が求められた際に、元の主治医が再度担当することもあります。NPへ引き継いだ後に困ることがないように、普段からしっかり管理しておくことも主治医の腕の見せどころですね。

上述のケースはほんの一例であり、実臨床で働いた経験のない医学生のみなさんには少しイメージの付きにくい話だったかもしれません。NPのおかげで、研修がより充実したものとなる環境が整いつつあるのを実感しております。これから見学に来られる医学生は、ぜひNPにも着目してみてください。

ドクターヘリのOJT

はじめまして。2年目の江原と申します。今回はドクターヘリOJTについてご紹介したいと思います。
 
 OJTとはOn the Job Trainingの略であり、つまりドクターヘリ実地研修のことです。当院は道央ドクターヘリ基地病院であり、道内最初にドクターヘリ正式運航を開始した老舗でもあります。救急科ローテーション中には希望すればOJTを行うことが可能であり、今回はその様子をお伝えできればと思います。 
 
 朝フライトスーツに着替え、8時15分からブリーフィング を行います。ブリーフィング では、医師、看護師、機長、整備士、コントロールセンターと医療機材、無線、天候などをチェックし、情報を共有します。天候や日照時間は、運航範囲にも影響します。また、出動した後の機材トラブルは致命的になるため、入念にチェックを行います。

 朝のブリーフィングが終わると、出動要請がかかるまで待機します。ERの混み具合にもよりますが、基本的にフライトに当たる医師はERや病棟業務には従事せず、要請があればすぐ出動できるよう待機します。要請がかかると医師、看護師はヘリポートへ全力疾走し、数分以内に離陸します。そのため患者情報、現地の救急隊の活動状況などは上空ではじめてわかることになり、限られた情報だけを頼りに着陸後に行う処置、搬送などの流れを考えながら機内で準備を進めなければなりません。

 現場に着陸すると救急隊と合流し、迅速に患者さんの状態把握と必要な処置を行い、搬送先を決定します。ドクターヘリの機内は狭く、必要な処置は離陸前に現場で済ませておく必要があります。搬送中はエンジンやプロペラの騒音で患者さんの声が一切聞こえないため、患者さんとモニターから目を離すことができません。また、院内と違って限られた機材しかなく、日照時間との兼ね合いなどから現場での活動時間も限られている場合が多いため、診察や処置より搬送が優先される場面も少なくありません。搬送先は、患者さんの重症度や搬送時間、ベッドの空きなどから総合的に判断します。搬送先に到着次第直ちに申し送りを行い、終了後すぐに帰院して次の要請を待ちます。1日多くて4、5回出動することもあります。運航時間は日没に合わせ夏季は18時、冬季は16時に終了となります。運航が終了するとその日の活動について振り返りを行い、改善点を共有します。

 OJTは、bystanderではなくチームの一員として活動しなければならないため、非常に緊張感があります。また、医学的観点だけでなく、搬送も含めた総合的な状況判断能力がフライトドクターには必要であると感じ、非常に勉強になりました。当院では初期研修期間中にプレホスピタルの最前線を学ぶことができますので、特に救急医療に興味のある方は、見学の受け入れが再開となった際にぜひ一度当院にいらしてください。

当院総合内科研修について

みなさん、はじめまして。手稲渓仁会初期研修医2年目の平塚と申します。今回は当院総合内科での研修について紹介したいと思います。

総合内科研修は当院初期研修プログラムの目玉とも言える内容で、2ヶ月間の研修中に病棟管理の基本を学びます。最初は、病院のシステム面についてたくさん学ぶ必要があります。例えば、電子カルテの使い方や、検査や処方オーダー、病棟指示、他科コンサルトなどです。というのも、チームの一員として、大学ではほとんど教わることがなかった事務的な仕事をまずはできるようになる必要があるからです。そして、医学の勉強も並行して行います。大学で十分に勉強しても、具体的な治療方法、たとえば薬や輸液の細かな用量・用法まで学ぶ機会が少ないのではないかと思います。

総合内科で担当する患者さんの多くは高齢者で、重症の場合は栄養や水分、電解質等の全身管理を要します。総合内科では、指導医による監督の下、研修医2年目から専攻医があらゆる面でサポートする、いわゆる“屋根瓦式の教育体制“を取っています。当然、2年目からは担当患者を持ちながら、自らが1年目のときに学んだものを1年目研修医に教える立場となります。これが知識のアウトプットの良い機会となると共に、自身も研修医1年目の担当症例を経験できるため、まさに一石二鳥といえます。

また、総合内科のカバーする疾患範囲は非常に広く、感染症や糖代謝異常、内分泌疾患、自己免疫性疾患、神経内科疾患など多岐にわたります。しかし、初診時にはどの疾患であるか不明なため、問診や診察から鑑別診断を立て、それに沿った検査を行い診断に近づいていきます。この点が非常に難しいと共に、総合内科のとても面白い部分だと思います。診断を自ら下し治療を開始するのは、患者さんが重症であればあるほど勇気がいるものです。そういった経験を丁寧な指導のもと積むことで、医師として一回り大きくなることができると考えます。総合内科の先生は非常に寛容で、最初から否定したりせず、我々の治療方針を大きな間違えがない限り、できるだけ尊重してくれます。そのため自分で考えて診療する力が身につき、成功体験を積むことで徐々に診療能力に自信を持てるようになります。そして、自信が持てると日々の研修がより楽しくなります。

当院総合内科で充実した研修生活を送りませんか? 皆様が来られるのを心からお持ちしております。

平塚祐真

心不全患者の治療をするのは…

医師だけではありません。
現代は心不全パンデミックと言われ、心不全患者が年々増加しています。もはや心不全は医師が薬を処方して良くなる病気ではなくなりました。むしろ食事療法、薬物療法、運動療法を患者さんが自己管理しながら継続していくことがカギとなります。理解ではなく、実践をどうするか。これが重要なのです。これに対して、当院の循環器内科では毎週「心不全カンファレンス」を行っております。このカンファレンスでは医師以外にも、看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師、医療ソーシャルワーカー(MSW)が集まり、入院患者の治療や退院後の生活などに関して話し合っております。今回はそんなお話です。

看護師は、普段、患者さんの傍にいる時間が最も長いため、食事状況や病気に対する心理状態を把握し、それを共有したり傾聴することに長けています。また、MSWはそのご家族にあった社会福祉を提供するために、患者さんの置かれている社会的状況をきめ細かく丁寧に聞き、退院後に最大限の支援ができるようにコーディネートしていきます。そして、薬剤師は薬の効果や副作用の説明だけではなく、自宅での服薬状況を聞き、その人の生活習慣に合わせた薬剤処方を提案してくれます。例えば、合剤を使用したり朝1回の内服に変更したりと、アドヒアランス低下に繋がるのを少しでも減らす工夫をして下さいます。
理学療法士は、入院中に元のADL近くまでリハビリアップをしてくれることにも驚きますが、普段の運動習慣や家の周辺事情を考慮した運動の仕方や、運動する気が起きない時にも筋力を落とさないような工夫を提案し、入院中のリハビリに取り入れてくれます。管理栄養士は、患者さんの食の嗜好を聞き、そこからエネルギー量を減らさず塩分を減らすなどバランスの取れた食事の工夫を考えてくれます。間食を加えたり栄養補助食品を導入したりして、制限がある中でも食の楽しみを奪うことない知恵には感心させられます。

このような多職種による心不全カンファレンスの目的は、理想的な治療ではなく個々人にできそうな目標を患者さんと共有することにあります。各職種はその専門知識と技能を駆使し患者の状態を捉えるので毎回頭が下がります。また、患者さんが各職種に見せる顔も異なります。それらの情報をカンファレンスで共有し、患者さんを含め全員が同じ方向にむかって進んでいきます。これこそが医療の神髄と言えるのではないでしょうか。医師の仕事だけではなく、多職種の仕事ぶりに注目してみてはいかがでしょうか。

初期研修医2年目 波多野涼介