研修

BSLがちょっと楽しくなる医学のお勉強

初期研修医2年目の末吉利成と申します。ICUをローテーションした際に勉強した、酸素療法のデバイスについてシェアします。

 皆さんは、BSLで患者さんの鼻に管がついていたり、口にマスクがつけられている姿やその横に大きな装置が設置されているのを見たことがあるのではないでしょうか。何だろうと思ったことはありませんか。

 今回は、酸素療法のデバイスについて少しお話しします。

 酸素投与のデバイスには、ざっくり分けて2つのカテゴリーがあります。低流量システム、高流量システム2つです。

 低流量システムは、鼻カニューラ、マスク、オキシマスク™、リザーバーマスクがあります。高流量システムには、High flow nasal cannulaとインスピロンマスク™があります。これら2つは、名前の通り流量が違うのですが、低流量システムか高流量システムかは、分時換気量がある値を超えるか否かで分けられます。具体的には、人の1回換気量を500mLとし吸気時間を1秒とすると、30L/分となるため、これを境に上記の区分けとなります。

 それでは、なぜ分時換気量で分けるかというと、分時換気量以下の流量で酸素を流すと投与している酸素のみならず周りの空気も吸ってしまうのです。そうなると、投与されている酸素○L /分のほかに周囲の空気が混ざってしまい正確に何リットルが吸入されているのかわかりません。つまり、酸素○L/分で流しても個々人でFiO2が変動してしまいます。そこで出てきたのが高流量システムです。高流量システムは分時換気量より多い量を流すことで周囲の空気が混ざることを防ぎ設定した量の酸素を投与することができます。つまり、FiO2を設定することが出来ます。それなら、すべて高流量でよいのではとお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、低流量システムは高流量システムと比べると安全で容易に使用でき、簡便であることから好まれることがあります。加湿が不十分な高流量システムは気道乾燥による害を及ぼすので、加湿のための回路構成ならびに使用中の水分供給などの手間が、高流量システムの一部として重要になります。

 ICUでは患者さんを1日に3人前後受け持ち、全身管理を行います。その際、By systemという臓器別に問題を挙げていき介入するという方法で患者さんを把握、治療するのですが、全て把握しきるのは大変です。ですが、ICUを担当する指導医の先生方が、こちらが感謝してもしきれないほど、研修医の特性や、弱点をみながらしっかり熱心に指導して下さるので、非常に充実した1ヶ月を過ごすことが出来ました。この場をお借りしてお礼申しあげます。

 おいでよ、手稲渓仁会病院ICU!

家庭医療クリニックでの外来研修

皆さんこんにちは。
冬になり、手稲も12月から雪がはじめました。例年、歩道の雪が深い時には10cmを超える時もあり、通勤中靴の中に雪が入ってげんなりしたり、滑って転んだりと雪には悩まされることも多かったのですが、今シーズンは暖冬と雪不足で、スキー場や雪まつりなど、北海道各地のイベント関係者が頭を悩ませています。

ところで皆さん、実習や研修などで診る病棟の患者さんが退院後どうなっているか、気になったことはありませんか?また、commonな糖尿病などの生活習慣病と向き合うことに興味はありませんか?当院における現行の初期研修プログラムでは、初期研修修了後に総合診療科専攻を希望する研修医という条件で、当院に併設された家庭医療クリニックにて長期フォローの患者さんの定期外来(週1回、半日)を1年間担当することができます。

手稲家庭医療クリニックでは、当院にて肺炎や脳梗塞などの急性疾患で入院加療を行った患者さんの退院後のフォロー、腫瘍疑いや肝機能異常など健康診断で異常を指摘された方の精査や、高血圧や糖尿病など生活習慣病のフォローなどが主な業務となります。

当院退院後の患者さんのフォロー外来では、治癒までの経過を長期的に診ることができ、検査や薬剤導入などを外来からみて入院中にしておきたいことなども学べ、普段の病棟業務に活かすことができます。急性期総合病院の病棟研修では経験できない疾患や病態を学ぶことができるので、とても勉強になります。患者さんも普段は仕事やご自身の生活があり、その合間をぬって受診にいらしているので、日常生活や趣味などの話も挟みながらご本人と対話をし、その方に合った医療を提供していくことにやりがいを感じます。しかし、長期渡航が控えていて副作用が怖いからと新規薬剤の導入を見送ったり、脂質異常症の薬物導入の基準にはかかっているものの本人が運動療法だけで治したいと頑張って改善に至ったりなど、ガイドライン通りにいかないことも多々あります。

1年を通し、決まった患者さんを継続的に担当する外来研修ができるのも、当院の研修の特色ですので、少しでも興味がある方は家庭医療科の見学にもいらしてみてください。

地域医療研修のご紹介

初めまして。研修医2年目の都甲(とごう)と申します。ご存知の方も多いと思いますが、現行の臨床研修制度における地域医療の到達目標は、『患者が営む日常生活や居住する地域の特性に即した医療について理解し、実践する』であり、へき地・離島診療所、中小病院などで地域医療として1ヶ月以上の研修を行うことが必要とされております。私も11月に地域医療研修として、倶知安(くっちゃん)町にあります倶知安厚生病院で研修を行ったばかりですので、簡単に紹介いたします。

 倶知安町は、北海道虻田郡にあります総人口15,132人の町であり、世界的なスキーリゾートで有名なニセコと隣接していることから、国外から多くの観光客が訪れる国際色豊かな町です。町の一般的なスーパーを訪れると、南半球やアジア圏からの観光客と思われる方々が買い物をしており、まるで外国に来たかのような錯覚を抱きます。当然、医療面も国際色豊かで、ハイシーズンになると救急外来は外国人の方のスキー・スノーボード外傷で溢れ、その時期の研修医はひっぱりだこのようです。残念ながら、私が訪れた時期はまだスキー場がオープンしていないこともあり、外国人患者さんの診療機会は少なめでしたが、日本語で診療するのと異なり、診察に際しての声かけや病状説明が不足するなど、母国語以外で診療することの難しさを実感し、非常に良い経験をさせていただきました。
 また、普段は急性期の治療内容を学ぶことに精一杯で、患者さんがどのように元の生活に戻っていくかイメージが湧きにくいのが正直なところでした。倶知安厚生病院では地域包括ケア病棟を備えており、急性期治療を終え、病状が安定した患者さんに対して在宅や介護施設への復帰支援に向けた医療を学ぶことができます。患者さんおよびご家族とのIC、他職種との退院支援カンファレンス、退院後の訪問診療などを通じて、患者さんやご家族の思い、そしてそれを支援する職員の方々の思いに触れ、地域の方々がまたそれまでの日常生活に戻れるよう医師として精進しなければならないと、思いを新たにしました。
 このように、本来の地域研修に加えて外国人診療の機会にも恵まれる点は、倶知安厚生病院および当院ならではと思います。ご興味のある学生さんがいらっしゃいましたら、ぜひ一度見学に当院へ足をお運びください。
 最後になりますが、寒さ厳しき折くれぐれもご自愛ください。

倶知安厚生病院から望む羊蹄山(富士山に似た姿から、蝦夷富士とも呼ばれています)

The elective at Te Omanga Hospice, New Zealand

こんにちは。2年目初期研修医の志村と申します。
寺田先生の記事にもありましたように、当院では国内外を問わず他施設での院外研修が可能です。私はニュージーランドのホスピスで4日間の研修をさせていただきましたので簡単にご紹介します。

北島の都市、ウェリントンの郊外にTe Omanga Hospiceは位置しています。ニュージーランドでは、多くの方が自宅で最期の時間を過ごすことを望み、それを実現しています。Te Omanga Hospiceは、外来・入院・在宅での緩和ケアを行なっている施設で、年間320人の患者さんを看取っているそうです。

ベッドは8床あり、終の住処というよりも、一次的に症状コントロールを行うための病棟としての役割が大きいことが特徴です。ホスピスで亡くなる方もいらっしゃいますが、多くの患者さんが入院中に症状コントロールを行いながら、家族会議を重ね、準備を整えて自宅へ戻って行きます。

家族会議は、本人、家族、医師、看護師、ソーシャルワーカーで大きな輪を組み、現状や今後の方針について共有する場です。一度、マオリ族の腎不全患者さんの家族会議に参加させていただきました。まず皆で祈りを捧げるところから始まり、現在の症状や今後などについてじっくりと話し合った後、皆で肩を組んで歌を歌い会議を終えました。会議自体はシビアな内容も含まれ、途中家族が涙する様子もあったものの、最後には皆、笑顔で前向きな発言をする様子が多くみられていました。

愛する者との別れは辛く悲しいものです。しかし、時間が限られているからこそ、命はより輝き、大切な時間を過ごすことができるのではと感じました。ニュージーランドの雄大な自然に囲まれ、優しい時間が流れるホスピスで、私自身が豊かな時間を過ごすことが出来ました。

日常とは全く異なる環境に飛び込み、新たな気づきを得られることが院外研修の醍醐味ではないでしょうか。院外研修を行うにあたり、お世話になった皆様にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。

Te Omanga Hospice, located in Lower Hutt, in the North Island of New Zealand provides inpatient, outpatient, and home-based palliative care. Thanks to the doctors and medical staff at both TKH and Te Omanga Hospice, I had the opportunity to visit there on an elective.
  Te Omanga Hospice has eight beds for patients who need acute symptom control or for terminal care but these days, many patients prefer to spend as much time, and ideally the end of their life in their own home.
 Family meetings play a vital role to achieve good quality of life for patients with terminal illness. I attended one of these family meetings for a Maori patient – it started with a Karakia, a prayer in the patient’s native language. After the prayer, we discussed the present situation, the patient’s goals and likely future prospects. We discussed what was needed for him, what could be provided and then set goals together. At the end of the meeting, we sang a song putting our arms around each other’s shoulders.
 Being separated from a loved one is never easy. However, they remind us of how precious life is. They teach us to live as if each moment is a gift. Dying is a normal process. Death is necessary for our life to be meaningful. The days I spent at Te Omanga Hospice were some of the most peaceful and serene of my life and made me realize the essential things in life.

産婦人科研修のご紹介

こんにちは!研修医2年の鈴木凜と申します。
手稲では11月中旬から雪が降り始め、地面は凍り、芯まで冷える寒さになってきました。去年転倒した反省を活かして気をつけて歩いていましたが、今年も早速派手に大こけしました。冬シーズンに見学予定の学生の方は、ぜひ滑りにくい靴でいらしてください。

それでは今回は、産婦人科研修について紹介したいと思います。
産婦人科は今までは選択枠でしたが、2020年度から必修枠となるので、次期1年目からは全員が研修することになります。
そこで、当院の産婦人科研修を3ポイントで紹介したいと思います。

①手術件数が豊富
数字でいうとピンとこないかもしれませんが、2018年(1~12月)の産婦人科総手術件数は1,656件、その中で腹腔鏡手術の比率が高く、1,016件行われています。これは全国でトップ3に入る件数だそうです。そのため、ほぼ毎日研修医は何かしらの手術に入っています。上級医の十分な指導の下、マニピュレーターという子宮を動かす器械の操作から始まり、研修医の能力に応じて手術手技の指導を受ける機会もあります。外科系を考えている人にとっては充実した日々になるかと思います。

②指導医が豊富
当院は手術件数が多いこともあり、多くのスタッフがいます。最近では専攻医の先生も増えてきており、若手からベテランの先生まで幅広くいらっしゃいます。
基本的に、研修医はローテート中に一人の指導医について病棟や外来などの業務にも関わらせていただきます。指導医以外の先生方も、新しい患者さんが来た時に研修医を呼んでくださり、みな優しく気さくに話しかけてもくださるので、相談もしやすく大変恵まれた環境です。

③休みがしっかりある
産婦人科では土日が完全オフです。しっかり休んでもよし、遊んでもよし、産婦人科に興味があって経験を積みたければ出勤してもよし。フレキシブルだけどしっかり学べるのが当院産婦人科の特徴と思います。

ということで大まかに産婦人科の紹介をしましたが、とにもかくにも出産は感動します。必修科になった産婦人科で是非たくさんのことを学んでください!

整形外科ローテーションの紹介 整形外科における身体所見

「身体所見」は視診・聴診・打診・触診と教科書には書いてあります。これは基本ですが、科によってその中で明かに比重が異なります。整形外科はやはり、触診です。具体的にどうやって診察するのかという質問を研修医からたびたび受けます。整形外科は当院では選択科目であり、全員に教えるということはできないので、今回は整形外科における身体所見の基本について、少し話をします。私自身、教科書ではなく、医者になってから整形外科領域の身体所見を学び、自分の中で体系化しています。

基本は「視診・Range of Motion (ROM)・圧痛・(スペシャルテスト)」

視診:発赤、腫脹、変形、創部の観察など見た目の異常です。
ROM:膝など関節の訴えがあればその関節のROM、下腿や上腕などであればその隣接関節のROMを診察します。表現の仕方ですが、屈曲しよう(させよう)としてその限界の角度を測定し、自動屈曲(他動屈曲)〇〇度のように標記し、必ずその逆も標記します。膝や肘なら伸屈曲のみで十分ですが、股関節や肩関節は内外転、伸屈曲、内外旋など多岐にわたります。運動時痛があれば、そのときにわかります。自動運動と他動運動で大きな違いがあれば、それも重要です。

圧痛:「触診」のなかでもっとも重要な項目です。筋肉が痛いのか、骨が痛いのか。細かく押します。骨折の診断において骨に痛みがあるのかは非常に重要です。触診なので熱感などもここで診察します。
(スペシャルテスト):Speed、Empty can、マックマレー、トンプソンなど聞いたことがあるテストは多くあると思います。四肢すべて集めると軽く100は超えるのではないでしょうか。ただ、これは研修医には正直不可能と思っています。非常に微細な所見をみて陽性か陰性か判断するため、経験がかなり必要となります。整形外科をローテーションした研修医にはスペシャルテストがいかに難しいかを肌で感じることができると思います。

私は研修医に視診・ROM・圧痛をカルテに明記できれば合格と常々いっています。スペシャルテストはそれこそ、専門(指導医)に任せれば良いのです。とはいえ、圧痛やROMも経験を要します。残念ながら、四肢の異常を患者さんが訴えても、何を診察すればわからずに身体所見に「疼痛」だけが記載されているカルテも見受けられます。そうやって思考を停止させず、最初は上手くできなくても「視て、触る」をやりつづけることです。そのいう小さな経験を積み重ねることが正確な診断への近道だと思っています。

整形外科 相澤

麻酔科ローテーションの紹介 脊髄くも膜下麻酔

麻酔科で恒例となっている脊髄くも膜下麻酔の研修について紹介します。

 脊髄くも膜下麻酔は、手技としては腰椎穿刺の延長上にあるものです。腰椎穿刺は初期研修の必修手技と国が定めています。これは髄膜炎の診療がプライマリーケアの一部として重要視されているためでしょう。
 当院の初期研修では1年目に1ヶ月必修として麻酔科をローテートしており、その中で脊髄くも膜下麻酔に積極的に取り組んでもらっています。この研修における特徴は、「課題に沿った自己学習」と「口頭試問による評価・補足」です。ただ手技に取り組むのではなく、きちんとした知識を身につけたうえで取り組んでほしい。そのために考えた方法です。
 講義でなく自己学習という形をとるのは、主体的に勉強することで知識がより良く定着すると考えたからです。口頭試問では1時間ほどかけて課題に対する回答・背景知識・思考過程を問います。不足があれば私が解説して補い、必要な知識を完成させます。麻酔科をローテートするのは毎月1-2名なので、こうしたきめ細かい方法が可能になります。
 実際の手技を行う段階においても研修医各自が熱心に取り組んでおり、自己学習が一層の積極性を生んでいるのではないか、と感じています。幸いなことに研修医からも、この研修スタイルに高い評価を得ています。

 研修医の自己学習の成果や思考過程を問う口頭試問では各研修医の個性にも接することができ、指導医の私にとって重要な時間になっています。今年も多くの研修医と接することを楽しみにしています。

麻酔科上級医