医学教育について

新年明けましておめでとうございます。研修医2年目の足立です。今回は、医学教育について少しお話いたします。

研修医が日々研鑽を積み医者として成長していくためには、よりよい教育の場、そして医学教育を意識しながら指導して下さる上級医の存在が不可欠であると感じています。

医学生のうちは必ず先生、講師がいるため、教えてもらえることが当然になっていましたが、実際の臨床現場ではそうではないことも多々あります。病院によっては、患者、指導医不足などで思う様に学ぶことができないこともあり、自分の理想とのギャップに悩む方もいるかもしれません。

当院では、研修病院として医学教育を重要視しており、さまざまなプログラムで研修医が成長していけるよう、多くの工夫があります。

まず、当院の全体的な雰囲気です。長年研修病院として多くの研修医を育ててきた実績もあり、当院の各科の指導医は非常に熱心な先生が多くいらっしゃいます。どの科に行っても、非常にしっかりとした指導が受けられますし、当院で研修した後もそのまま勤務を続けている先生も多くいらっしゃり、より身近な存在として自身の経験も踏まえた上で指導を行ってくださいます。

さらに特徴的なのは、このブログでも何度か紹介されている総合内科研修です。ここでは、研修医ができるだけ多くを学べるよう、さまざまな工夫がされています。朝のカンファレンスで発表し、治療方針や今後の計画について議論を行い、回診時にはベッドサイドで身体所見や患者さんの状態などを一緒に見ながら指導を受け、初期研修医が学ぶべき患者診療の基礎を学べます。

これは、現在スーパーローテートで研修しているわれわれにとって非常に重要なことです。内科専攻の先生はもちろんのこと、外科系を目指している先生でも内科の基礎についてしっかり学べます。外科系志望の先生が内科を学べるのは初期研修が最後となる可能性が高いため、しっかりとした教育体制が整っている場で受けられれば、今後の医師人生の大きな財産となるはずです。

他には、毎朝モーニングレポートという勉強会を行っており、ここでは日常の疑問点や知らなかった点をいくつもの科の先生から講義形式で受けられ、知識を日々アップデートできます。さらに発表の機会も与えられているため、自分の知識を他者に伝えることで自分の中の理解も深まり、今後さらに重要となる大勢の前できちんと話す能力も鍛えられます。

また、当院ではDynaMedやUpToDateなどの二次文献へのアクセスを自由に行えます。初期研修医のうちから医学知識を英語で検索し、必要な文献を探すという能力を培うことで、英語力の向上にも役立ちます。

日進月歩の医学という世界において、日常診療でも完全な正解がない中で指導も行うのは非常に難しいと思いますが、目の前の患者に悩みながらも自分達を引っ張って下さる指導医を見て、自分もいつかカッコよく後輩を指導できる立場になりたいと思います。

このように、研修医の時からよりレベルの高い医学教育に触れ、実践していくことで今後の医師人生の糧になると思います。

外科系希望ですが、初期研修のこれらの魅力をもとに、当院を選んだ私の現時点での感想を交えて記載しました。学生の皆さまの参考になれば幸いです。

見学受け入れが再開となった際には、実際にどんな指導、教育をしているのか、そして研修医がどのように成長しているのかを見てください。心よりお待ちしております。

ナースプラクティショナーがいる生活 Part.2

はじめまして、手稲渓仁会病院初期研修医2年目の金谷和哉です。
みなさんはナースプラクティショナー(NP)という言葉を耳にしたことはありますか?もしはじめて聞いたという方は、普段このブログを読みこんでいませんね?(笑)。読んでいない方は、今年7月21日の池田先生のブログ記事で触れられているので、そちらもぜひご参照ください。

当院総合内科ではNPを活用しており、全国的に見ても非常に先進的な研修病院です。本格的にNPが医師チームに加わり、患者診療にあたるようになったのは今年の7月から。今後、ますます磨きがかかっていくことでしょう。今回、NPがチームにいるメリットを具体例を交えながら、研修医目線でさらにお伝えします!

先日、重度認知症を背景とし、慢性的な便秘から尿閉に至った80代女性患者さんを受け持ちました。医学的には外来でもフォロー可能な状態でしたが、ご家族は介護疲れで疲弊していたことから入院を選びました。下剤の使用で排便が得られ、自尿も認められるようになり尿閉も解除したため、入院後1週以内にはいつでも退院できる状態まで改善しました。しかし、そのあとに退院先を自宅にするのか長期療養型病院にするのか、長期療養としてはどの病院が最適かなど、社会的な調整に時間を要し、最終的には1カ月間の入院が必要でした。その間、医学的な介入はほぼ不要な状態であっても、さまざまな調整で時間を取られてしまうことがあります。そういった慢性期の管理・調整を引き受けてくださるのがNPです。実際今回のケースも、入院期間の2/3程度はNPに担当いただくことができたおかげで、私は手の空いた時間を使って他の迅速な対応を求められる患者さんの診療に専念することができました。

他にも、誤嚥性肺炎治療後で転院待ちとなった患者さんや、菌血症に至った尿路感染症で全身状態が安定し規定の日数の抗生剤加療を続ける患者さんなど、急性期の管理が落ち着いた患者様をたくさん引き受けていただくことによって、われわれ研修医は新規の入院患者さんを担当することができ、より効率的にたくさんの症例を経験することができるようになりました。病態によっては、NPへ担当を引き継いだ患者さんが急変し、再び医療的な介入が求められた際に、元の主治医が再度担当することもあります。NPへ引き継いだ後に困ることがないように、普段からしっかり管理しておくことも主治医の腕の見せどころですね。

上述のケースはほんの一例であり、実臨床で働いた経験のない医学生のみなさんには少しイメージの付きにくい話だったかもしれません。NPのおかげで、研修がより充実したものとなる環境が整いつつあるのを実感しております。これから見学に来られる医学生は、ぜひNPにも着目してみてください。

ドクターヘリのOJT

はじめまして。2年目の江原と申します。今回はドクターヘリOJTについてご紹介したいと思います。
 
 OJTとはOn the Job Trainingの略であり、つまりドクターヘリ実地研修のことです。当院は道央ドクターヘリ基地病院であり、道内最初にドクターヘリ正式運航を開始した老舗でもあります。救急科ローテーション中には希望すればOJTを行うことが可能であり、今回はその様子をお伝えできればと思います。 
 
 朝フライトスーツに着替え、8時15分からブリーフィング を行います。ブリーフィング では、医師、看護師、機長、整備士、コントロールセンターと医療機材、無線、天候などをチェックし、情報を共有します。天候や日照時間は、運航範囲にも影響します。また、出動した後の機材トラブルは致命的になるため、入念にチェックを行います。

 朝のブリーフィングが終わると、出動要請がかかるまで待機します。ERの混み具合にもよりますが、基本的にフライトに当たる医師はERや病棟業務には従事せず、要請があればすぐ出動できるよう待機します。要請がかかると医師、看護師はヘリポートへ全力疾走し、数分以内に離陸します。そのため患者情報、現地の救急隊の活動状況などは上空ではじめてわかることになり、限られた情報だけを頼りに着陸後に行う処置、搬送などの流れを考えながら機内で準備を進めなければなりません。

 現場に着陸すると救急隊と合流し、迅速に患者さんの状態把握と必要な処置を行い、搬送先を決定します。ドクターヘリの機内は狭く、必要な処置は離陸前に現場で済ませておく必要があります。搬送中はエンジンやプロペラの騒音で患者さんの声が一切聞こえないため、患者さんとモニターから目を離すことができません。また、院内と違って限られた機材しかなく、日照時間との兼ね合いなどから現場での活動時間も限られている場合が多いため、診察や処置より搬送が優先される場面も少なくありません。搬送先は、患者さんの重症度や搬送時間、ベッドの空きなどから総合的に判断します。搬送先に到着次第直ちに申し送りを行い、終了後すぐに帰院して次の要請を待ちます。1日多くて4、5回出動することもあります。運航時間は日没に合わせ夏季は18時、冬季は16時に終了となります。運航が終了するとその日の活動について振り返りを行い、改善点を共有します。

 OJTは、bystanderではなくチームの一員として活動しなければならないため、非常に緊張感があります。また、医学的観点だけでなく、搬送も含めた総合的な状況判断能力がフライトドクターには必要であると感じ、非常に勉強になりました。当院では初期研修期間中にプレホスピタルの最前線を学ぶことができますので、特に救急医療に興味のある方は、見学の受け入れが再開となった際にぜひ一度当院にいらしてください。

『レジナビFairオンライン関東Week2020』に参加しました

みなさま、こんにちは。
TKHレジデントブログチーム事務局です。
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。

 11月19日(木)18:00から、臨床研修部部長の星医師、教育担当の石原医師・外科今村医師の3名で、『レジナビFairオンライン関東Week2020』に参加しました。当日は73名の医学生の方にご参加をいただきました。ご参加いただきました方には、大変ありがとうございました。

 説明会は約10分間の病院説明、そのあとチャットでいただたご質問にお答えする質疑応答が約10分の計20分でした。もしご参加が叶わなかった方も、説明会の動画がレジナビサイトに公開されましたので、是非ご覧いただけましたら幸いです。また、時間の関係ですべてのご質問にお答えすることができませんでしたが、いただいたご質問にお答えできるよう、準備ができ次第公開していきたいと思っています。

引き続き、臨床研修部ブログをどうぞよろしくお願いいたします。

説明会動画は こちら から

書籍のご案内

羊土社のレジデントノート12月号に、当院外科の今村清隆先生が『初期研修で会得しておきたい外科的素養』という特集を組まれました。11月10日発刊です。多くの著者の方にも御協力いただき、非常に良いものに出来上がったと伺っております。どうぞ宜しくお願いいたします!

当院総合内科研修について

みなさん、はじめまして。手稲渓仁会初期研修医2年目の平塚と申します。今回は当院総合内科での研修について紹介したいと思います。

総合内科研修は当院初期研修プログラムの目玉とも言える内容で、2ヶ月間の研修中に病棟管理の基本を学びます。最初は、病院のシステム面についてたくさん学ぶ必要があります。例えば、電子カルテの使い方や、検査や処方オーダー、病棟指示、他科コンサルトなどです。というのも、チームの一員として、大学ではほとんど教わることがなかった事務的な仕事をまずはできるようになる必要があるからです。そして、医学の勉強も並行して行います。大学で十分に勉強しても、具体的な治療方法、たとえば薬や輸液の細かな用量・用法まで学ぶ機会が少ないのではないかと思います。

総合内科で担当する患者さんの多くは高齢者で、重症の場合は栄養や水分、電解質等の全身管理を要します。総合内科では、指導医による監督の下、研修医2年目から専攻医があらゆる面でサポートする、いわゆる“屋根瓦式の教育体制“を取っています。当然、2年目からは担当患者を持ちながら、自らが1年目のときに学んだものを1年目研修医に教える立場となります。これが知識のアウトプットの良い機会となると共に、自身も研修医1年目の担当症例を経験できるため、まさに一石二鳥といえます。

また、総合内科のカバーする疾患範囲は非常に広く、感染症や糖代謝異常、内分泌疾患、自己免疫性疾患、神経内科疾患など多岐にわたります。しかし、初診時にはどの疾患であるか不明なため、問診や診察から鑑別診断を立て、それに沿った検査を行い診断に近づいていきます。この点が非常に難しいと共に、総合内科のとても面白い部分だと思います。診断を自ら下し治療を開始するのは、患者さんが重症であればあるほど勇気がいるものです。そういった経験を丁寧な指導のもと積むことで、医師として一回り大きくなることができると考えます。総合内科の先生は非常に寛容で、最初から否定したりせず、我々の治療方針を大きな間違えがない限り、できるだけ尊重してくれます。そのため自分で考えて診療する力が身につき、成功体験を積むことで徐々に診療能力に自信を持てるようになります。そして、自信が持てると日々の研修がより楽しくなります。

当院総合内科で充実した研修生活を送りませんか? 皆様が来られるのを心からお持ちしております。

平塚祐真

心不全患者の治療をするのは…

医師だけではありません。
現代は心不全パンデミックと言われ、心不全患者が年々増加しています。もはや心不全は医師が薬を処方して良くなる病気ではなくなりました。むしろ食事療法、薬物療法、運動療法を患者さんが自己管理しながら継続していくことがカギとなります。理解ではなく、実践をどうするか。これが重要なのです。これに対して、当院の循環器内科では毎週「心不全カンファレンス」を行っております。このカンファレンスでは医師以外にも、看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師、医療ソーシャルワーカー(MSW)が集まり、入院患者の治療や退院後の生活などに関して話し合っております。今回はそんなお話です。

看護師は、普段、患者さんの傍にいる時間が最も長いため、食事状況や病気に対する心理状態を把握し、それを共有したり傾聴することに長けています。また、MSWはそのご家族にあった社会福祉を提供するために、患者さんの置かれている社会的状況をきめ細かく丁寧に聞き、退院後に最大限の支援ができるようにコーディネートしていきます。そして、薬剤師は薬の効果や副作用の説明だけではなく、自宅での服薬状況を聞き、その人の生活習慣に合わせた薬剤処方を提案してくれます。例えば、合剤を使用したり朝1回の内服に変更したりと、アドヒアランス低下に繋がるのを少しでも減らす工夫をして下さいます。
理学療法士は、入院中に元のADL近くまでリハビリアップをしてくれることにも驚きますが、普段の運動習慣や家の周辺事情を考慮した運動の仕方や、運動する気が起きない時にも筋力を落とさないような工夫を提案し、入院中のリハビリに取り入れてくれます。管理栄養士は、患者さんの食の嗜好を聞き、そこからエネルギー量を減らさず塩分を減らすなどバランスの取れた食事の工夫を考えてくれます。間食を加えたり栄養補助食品を導入したりして、制限がある中でも食の楽しみを奪うことない知恵には感心させられます。

このような多職種による心不全カンファレンスの目的は、理想的な治療ではなく個々人にできそうな目標を患者さんと共有することにあります。各職種はその専門知識と技能を駆使し患者の状態を捉えるので毎回頭が下がります。また、患者さんが各職種に見せる顔も異なります。それらの情報をカンファレンスで共有し、患者さんを含め全員が同じ方向にむかって進んでいきます。これこそが医療の神髄と言えるのではないでしょうか。医師の仕事だけではなく、多職種の仕事ぶりに注目してみてはいかがでしょうか。

初期研修医2年目 波多野涼介

第3回 小児科専門研修プログラム Web説明会のご案内

将来、小児科医になることを希望している初期研修医の皆さま、こんにちは。
この度当院小児科では、好評につき第3回の病院説明会を開催する運びとなりました。
少しでも興味がある方は、ぜひご参加ください。

第3回 手稲渓仁会病院 小児科専門研修プログラムWeb説明会
日時:2020年10月2日(金) 19時~
場所:Zoomを用いてWeb上で開催
対象:卒後1~2年目の初期研修医の方
   お申込みは こちら から
※申込締め切り:9月30日(水)
②開催2日前頃にZoom ID, パスワードをお送りいたします。
③説明会当日は送られてきた②のログイン情報にてご参加ください。

外科系志望も満足できる環境

みなさん、はじめまして。初期研修医2年目の八木隆太です。本投稿を記載している8月末は、本州ではまだまだ蒸し暑く夜も寝苦しい日々が続いていると思いますが、札幌では、夜は20℃を下回る日々で夏の終わりを肌身で感じています。

 さて、本日のブログの内容はタイトルにもあるとおり、将来外科系に進もうとしている方たちが気になる外科系の教育環境について、ご紹介させていただこうと思います。手稲渓仁会病院はみなさんもご存知のとおり、英語教育や総合内科が有名で、それらを目的に見学に来たりする方が多いと思います。他院の初期研修医がどこまでの外科訓練をしているかがわからないため比較はできませんが、当院でもやろうと思えば多くの外科系手技の経験を積むことができる環境です。

 まず、最初に外科系を目指す人が一番気になる手術です。手稲渓仁会病院外科の年間手術件数は1800件程度であり、当院の外科専門研修プログラムを見ても手術経験数は500例、執刀数は200例以上が見込まれるほど多くの手術が行われています。外科の基本的手技である縫合は、入職して間もないうちに外科医による縫合のレクチャーがあります。短い手術では器械出しを任せられ、手術器具の名前を覚えたり、手術の流れに合わせて器具を出したりすることで、チームとしての一体感を肌で味わうことができます。また、外科以外にも産婦人科や整形外科等、手術件数の多い科での研修が可能です。

 続いては手術室の外での手技です。CVやPICCカテーテルの挿入、胸腔・腹腔穿刺などの手技も実は多くあります。研修医室で黙々とカルテ業務をこなしているだけでは、機会を見逃す可能性が多いですが、当院には面倒見がよく、教育的な指導医が多いです。なので、自分から積極的にアピールすれば、内科系含めローテーションしている科で外科手技があるたびに呼んでもらえるようになります。

 最後になりますが、スキルシミュレーションセンターについてです。手稲駅から電車で13分とちょっと離れたところにありますが、ここでは腹腔鏡下手術のシミュレーションを含め、CVの練習や、各種手術器具の練習もさせていただけます。毎週木曜日の午前中は病院が契約しており自由に使うことができます。木曜日は基本的に外科の手術が少ないため、外科ローテーション中は行かせてもらうことができます。また、ナイトフロートや救急科ローテーション中も、木曜日の午前中が空いていれば使うことができます。

 当院は英語教育と総合内科に注目が集まりがちですが、外科系志望のみなさんも安心して研修できる環境があります。外科系志望のみなさん、是非当院での研修を考えてみてはいかがでしょうか。

Web講演会のご案内

みなさま、こんにちは。Web講演会第11弾は、当院の研修修了生である遠藤麻由美先生に『エビデンスに基づく(辛い)研修医生活を乗り切る方法』をお話し頂く予定です。シアトルからご講演頂くため、夜10時から開始です。講演会の対象は、医学生、研修医としていますが、どなたも参加可能です。
 Webinar形式で参加者のビデオはOFFですので、どうぞ気軽にご参加ください。

タイトル: 『エビデンスに基づく(辛い)研修医生活を乗り切る方法』
日時:9月26日(土)PM 10~11時
参加料:無料

参加登録は こちら から
参加には、登録後に送られる自動送信メールの内容が必要です。どうぞよろしくお願いいたします。

問い合わせ先:手稲渓仁会病院外科 今村清隆
Email: imamura-ki@keijinkai.or.jp