ステントグラフト内挿術
副院長
心臓血管センター長
大動脈血管内治療センター長
臨床研修センター長
栗本 義彦
ステントグラフトとは
ステントグラフトとはバネ状の金属(ステント)をつけた人工血管(グラフト)のことで、大動脈瘤で膨らんだ血管の代わりに血液の通り道となります。バネで収縮するため、縮めた状態でカテーテル(治療用の管)を通して血管内を運び、大動脈瘤の場所でバネを広げて人工血管を固定することができます。
治療の方法と進め方
脚(多くは腿)の動脈からカテーテルを差し込み、血管造影装置の透視画像を見ながらステントグラフトを送り込みます。当院では血管造影装置を備えたハイブリッド手術室で実施します。
従来の切開手術では数週間入院が必要だったところ、ステントグラフト内挿術の場合は手術の傷は脚に数cmできるのみなので、数日で家に戻ることができます。
ハイブリッド手術室
ステントグラフト内挿術は、血管造影装置による透視画像が重要となるため、手術室に血管造影装置を備えたハイブリッド手術室で実施しています。リアルタイムで画像情報が得られることに加え、術前に撮影したCT画像を取り込むことで、3DのCT画像を見ながら手術を進めることができます。これは造影での撮影回数を減らせるほか、より安全で高度な治療の実施につなげることができます。
手稲渓仁会病院の
ステントグラフト内挿術 ここが安心◎
手術例の経験が豊富
ステントグラフト内挿術は、日本では2002年に保険適用となりましたが、既製品のステントグラフトが認可されたのは腹部が2006年、胸部が2008年からです。
私は既製品認可の前は手製でステントグラフトを作りながら400名以上に手術を重ねてきました。今では2000例以上の経験を重ね、一歩先行く治療を提供しています。
再治療率が少ない
腹部大動脈のステントグラフト内挿術は腰動脈で逆流が起こり、再治療となる例が全国では約2割報告されています。
当院ではステントグラフト留置後、2日間の術後管理により血圧などをコントロールし、逆流の発生を半分以下に抑えています。また、2015年からは動脈瘤を液状硬化物質でふさぐ方法を道内で初めて導入し、さらに再治療率を下げています。
適応範囲が広い
胸部の手術で、頭部・上肢の血管と枝分かれする大動脈弓部の大動脈瘤に対しても、開窓型(穴開き)グラフトを使用し対応するなど、ステントグラフトを手作りしていた時代から症例を重ねている強みが生きています。
2015年からは大動脈解離の慢性期の患者さんに対しても適用を広げるなど、難症例への対応も進めていますので、まずはご相談ください。