da Vinciとは
さまざまな分野でロボットが活躍する現代。
最先端の科学は、「ロボット外科手術」という形で医療の分野でも実用化され、大きな恩恵をもたらしています。
da Vinci(ダビンチ)は、ロボット外科手術で使用される「鏡視下手術支援ロボット」です。ロボットアームと内視鏡カメラを執刀医が遠隔操作して手術を行います。
執刀医は、患者さんの体内に入ったように思えるほど鮮明な映像を見ながら、人間の手の限界を超えた精密さ・正確さで自由に動くアームを駆使することができます。つまり、ごく限られた手術の名人の技を、広く一般の手術で再現してくれるのがこのロボットです。
da Vinciは、2021年12月時点で世界中で既に6500台以上が導入され、これまでに1,000万件を超えるロボット支援手術が行われてきました(出典:Intuitive Surgical社資料 )。日本でも2012年にロボット支援前立腺全摘除術(RARP)が保険適用となって以来10年が経過して今では泌尿器科領域で広く普及し、転移のない早期前立腺がんでは標準術式となったのに引き続き、2016年4月からは小径の腎臓がんに対するロボット支援腎部分切除術(RAPN)が保険適用になりました。さらに2018年4月には膀胱がんに対するロボット支援膀胱全摘除術(RARC)のほか、泌尿器科以外でも肺がん、縦隔腫瘍、胃がん、大腸がん、食道がん、婦人科領域などで保険適応による手術が可能となり、いまやda Vinciによる手術は日常的でより身近なものとなっています。当院は道内で最も早く2011年8月にda Vinci Sを導入し、多くの手術実績を積み重ねてきましたが、2017年9月より第四世代最新機種のda Vinci Xiにバージョンアップし、さらに操作性と安全性が向上しました。
泌尿器科では、膀胱瘤など骨盤臓器脱(POP)に対してロボット支援腹腔鏡下仙骨腟固定術(RASC)を2021年1月から保険適応で開始したのに引き続き、 *部分切除ができない大きな腎がんに対するロボット支援腎全摘術(RARN)、 *腎盂がん・尿管がんに対するロボット支援腎尿管全摘術(RANU) についても、これまでの多数のロボット手術の実績と経験をふまえて2022年4月の適応承認と同時に厚生局より保険診療の認可を得ることができ、ロボット支援による手術を開始いたしました。
泌尿器科でダビンチ手術1200例達成
当院では、2011年に道内でいち早く鏡視下手術支援ロボット「ダビンチ」を導入し、2011年11月10日に北海道で初のダビンチ手術となるロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)を泌尿器科で行いました。その後、2012年4月に前立腺がんの前立腺全摘除術に続いて2016年4月から腎臓がんの腎部分切除術(RAPN)、2018年4月には膀胱がんに対する膀胱全摘除術(RARC)が保険収載となり、いずれの術式も即座に厚生局から施設基準の認可を得ることができましたので、その後は保険診療で各術式を施行し順調にロボット手術症例を積み上げてまいりました。そして2020年10月で泌尿器科におけるダビンチによるロボット手術の累積件数が1000例に達し、2023年6月までに前立腺全摘術1047例、腎部分切除術253例、膀胱全摘術89例など、1400例を超える症例数となっています。
実際のロボット手術の遂行にあたっては、執刀医のほかに患者さんの状態を管理する麻酔科医、手術を直接または間接的に介助する看護師、機材を管理運用する臨床工学技士などがタッグを組んで「チーム ダビンチ」を結成し、チーム医療を実践してこれにあたることでこれまでに重篤な周術期合併症を起こすことなく、安全に症例を積み上げることが可能となりました。
ロボット支援による鏡視下手術は、高精細の3D内視鏡カメラを見ながら人間の手よりも高い自由度で微細な動きができるロボットアームを体外から操作するもので、執刀医はあたかも患者さんの体内に入って顕微鏡手術を行っているような感覚で手術を進めることができます。このため繊細で高精度の手術操作が可能となり、出血量が少なく、合併症や併発症が起きにくく、神経温存が可能となるなど、安全でQOLに優れた「患者さんに優しい手術」を実現できます。
一方、執刀する医師や介助するスタッフにとっては、快適な操作性とスムーズな手術遂行により負担や疲労が軽減され、業務の効率化が図られるほか、在院日数の短縮や人件費の削減などにより、ロボット手術は結果的に病院経営の健全化にも寄与できることがわかってきました。
2018年度の診療報酬改定では泌尿器科領域以外に各科でも広くロボット支援内視鏡手術の保険適用が拡大され、現在では胸部外科、腹部消化器外科、婦人科などでもロボット手術が日常的に広く行われるようになっています。