当科の理念と診療方針
腫瘍内科は、がん患者さんの診療にあたる総合内科です。治癒切除困難な進行がんに対する抗がん薬治療を専門的に診療していますが、単にステージ4 進行がんの標準治療として抗がん薬を投与することだけではありません。
「どうして抗がん薬治療をするのだろうか?」
抗がん薬の位置づけを確認しながら、がんに対する適切な治療選択とその導入に加えて症状緩和を同時に進めています。また、外科、放射線治療科、精神保健科、緩和ケアチーム、看護師、薬剤師、栄養士、リハビリテーション部や医療ソーシャルワーカーなどがん治療に関連する多職種間の連携をはかり、診療をすすめていくことも腫瘍内科の役割となります。
悪性度(組織型)の確定、病期決定、腫瘍量ならびに活動性(速やか vs 緩やか)、緩和すべき症状の有無、予後規定因子や病変などの評価に基づいて予測される治療経過を判断することから始まります。また、Performance Status、認知機能を含んだ各臓器機能、社会的背景や併存する合併症(特に高齢者)、更には治療により予想される効果(メリット)や副作用(デメリット)を加えた総合的な評価に基づいて治療方針を決定しています。
患者さんの症状や意向などを確認したうえで、他の治療選択肢の可能性を提示しながら、抗がん薬の目的(役割)とともに原則として病名・病状・予想される経過について段階的に告知を行っていきます。抗がん薬は副作用を伴い、また、その効果は不確実な側面を伴う治療のため、患者さん自身の病気や治療に関して理解し、納得しながら進めていくべきものと考えており、患者さんの同意のもと治療を開始していきます。具体的な治療目標を一緒に考えながら治療を行えるように心がけています。治療開始後も引き続き患者さんの希望に添った生活を考慮し、抗がん薬治療をはじめとするがん治療の位置づけを確認しながら、治療変更や緩和医療への移行などを検討していきます。
主として外来通院治療となりますが、入院が必要な抗がん薬治療は短期入院で対応します。病状の進行、合併症の出現や副作用のため全身管理が必要な場合も、入院のうえ治療を行います。また、緩和ケアチームなど他職種との連携を導入すべき患者さんであれば、治療早期より対応していきます。一方、抗がん薬を主体とする治療では効果が乏しい、また、副作用のため体力低下をきたした場合など緩和ケアをすすめるべき状態となった場合には、患者さんと相談しながら訪問診療による在宅緩和医療や緩和ケア病棟への移行を行っていきます。
当科における主となる診療分野は、消化器や乳腺をはじめとする固形がん、原発不明がん、肉腫など悪性腫瘍の治療(抗がん薬治療)です。セカンドオピニオン、がん治療や遺伝性腫瘍に対する相談なども対応しています。
腫瘍内科では、新しい抗がん薬治療開発のため、臨床研究を実施しています。患者さんには、次世代の治療開発となる臨床研究について、ご相談することがあります。