当院では多様ながん疾患に対し専門性が発揮できるよう、2チームに分かれて治療を行っています。
がんのリハビリテーションは病期により大きく4つの段階に分けられ、治療開始前から「予防的リハビリ」を開始します。たとえば、呼吸に影響する手術の前には呼吸リハビリを開始し、手術後の肺炎や無気肺などの合併症の予防と術後の離床をサポートしています。
治療開始後は「回復的リハビリ」を行い、運動療法を行うことで、全身の身体機能改善をはかり、後遺症を最小限にしてスムーズに治療前の生活に戻れるように支援を行います。
がんが進行していたり、再発して骨に転移したりした場合は、がんの治療とともに生活の質を落とさないようにする「維持的・緩和的リハビリ」を行います。終末期にともなう腫れや痛み、日常生活での活動制限といったさまざまな症状に対し、できることを患者さんと共に検討していきます。
消化器内科・腫瘍内科部門
「消化器内科部門では、上部下部消化管の疾患(がん、胃十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、食道静脈瘤など)や、肝臓(肝炎、肝細胞がん)・胆嚢(胆石症、胆嚢がん)・膵臓(膵炎、膵臓がん)・胆管(胆管炎、胆管がん)の疾患をお持ちの患者さんに対するリハビリテーションを実施しています。疾患や症状によって絶食を余儀なくされたり、十分な食事摂取が困難となることで、体力・筋力が低下し日常生活に支障を来してしまうことも少なくありません。リハビリテーションでは、入院前と同じような生活を再び送ることができるよう、患者さんの病状に合わせて運動や活動を支援しています。
腫瘍内科部門では、がんの治療として化学療法・放射線療法を行う患者さんのリハビリテーションを実施しています。副作用が出る場合も多く、治療を継続しながら生活するには、体力・筋力を温存しておくことが大切です。リハビリテーションでは、症状とうまく付き合いながら患者さん一人ひとりが望む生活を続けることができるよう、運動や活動のみならず、日常生活での工夫点などもアドバイスしながら、患者さんやご家族を支援しています。」
婦人科・血液内科・緩和ケア部門
婦人科・血液内科では、肺がん・乳がん(胸部外科)や、頭頸部がん・喉頭がん(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)、前立腺がん(泌尿器科)、子宮頸がん・子宮体がん(婦人科)などを担当しています。
治療としては、頸部・腋窩リンパ節郭清術後には手術による神経障害などによって肩が上がりにくくなる場合があるため、手術前後で肩の運動を行います。
前立腺摘出術後の尿失禁が、生活の質を低下させる合併症であることはよく知られています。この尿失禁に対して骨盤底筋体操が有効であることが報告されており、当院では手術前と退院前に個別評価を実施した上で、体操の方法をお伝えしています。
乳がんと婦人科がんの手術後には、手足が腫れるリンパ浮腫という合併症があります。この浮腫の原因になり得る動作やリスクをお伝えすることで発症の予防に努め、浮腫のチェック方法をお伝えすることで浮腫の早期発見や早期からの治療開始につなげ、重症化を防ぐ取り組みを行っています。退院前にはリンパ浮腫について基礎的なお話と、必要に応じて用手的リンパドレナージの行い方をお伝えしています。婦人科がんに対して手術前後にリハビリテーションを実施している施設は全国的にもめずらしいため、リハビリテーション介入による治療効果検証のためデータ収集並びに解析を進めています。