脳卒中センター
センター長あいさつ
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脳卒中センター センター長
脳血管内科 主任部長髙田 達郎 -
日本人の脳卒中死亡率は1960年代をピークに年々減少してきていますが、未だがん、心臓病に次ぐ第3位(2018年現在)です。また、脳卒中発症後は片麻痺や認知症などの後遺症を残し、特に高齢者では脳卒中をきっかけに寝たきりの生活となる可能性もあり、高齢者における要介護の原因の約40%は脳卒中です(2018年現在)。人生100年時代へ向けて脳卒中による死亡や要介護状態を克服することは国の重要な課題のひとつとなっています。そこで、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)」が2018年12月に制定されました。この法律によって、脳卒中の診療体制の整備が進むことが期待されています。
1995年、米国において脳梗塞に対する点滴静注による血栓溶解療法(tPA静注療法)の有効性が大規模臨床試験で報告され、発症3時間以内の脳梗塞治療として認可されました。その後、発症4時間半まで有効であることが証明されています。日本においても、2005年に厚生労働省の認可を得て使用できるようになり、2020年現在は発症4時間半以内の脳梗塞に対して適応となっています。一方で、カテーテルという管を使い脳血管の病気を治療する方法が発達し、血管を詰まらせた血栓をカテーテルやステントという網状の筒で回収する方法(脳血栓回収療法)が可能となり、詰まってから8時間以内の太い脳血管の閉塞に対して有効であることがわかりました。その後も技術の進歩に伴い、現在は条件が整えば24時間以内でも有効なことがわかっています。しかし、tPA静注療法も脳血栓回収療法も脳梗塞発症早期であればあるほど治療効果が高いこともわかっています。
より多くの脳卒中患者さんを要介護状態から救うためには、迅速・的確な脳卒中の診断と治療が欠かせません。それには整備された脳卒中診療体制が必要です。日本脳卒中学会では脳卒中・循環器病対策基本法の制定と同時に、脳卒中診療体制の再構築に向けて脳卒中センターの認定を開始しました。当院は北海道の中核病院として、札幌市およびその近郊のみならずドクターヘリを用いてより広域の救急患者に対応しております。そして、脳神経外科を中心とした脳疾患センターとして、重症頭部外傷、脳卒中などに対応してまいりました。そして、2019年4月に全ての脳卒中に対してより専門的に対応できるように新たに脳卒中センターを設立し、脳神経外科と脳血管内科の混合チームとして、脳卒中に特化した診療体制を構築しました。当院の脳卒中センターは、日本脳卒中学会から脳卒中センターの認可を受けており、脳卒中の内科管理から脳血管内治療、脳卒中外科治療まで全ての脳卒中に対する診断、治療が可能です。
脳卒中は今や治癒可能な疾患です。手稲渓仁会病院脳卒中センターは脳卒中患者さんの健康寿命延伸のため365日24時間体制で対応してまいります。