第12話「点滴」
点滴とはどういう薬でしょうか
点滴とは、ボトルやバッグをつり下げて、少量ずつ注射薬を投与するための注射方法です。点滴を行う目的には、輸液(ゆえき)自体の効果を期待する場合と、抗がん剤や抗菌剤など急速に投与すると副作用が起きる薬剤をゆっくり投与するために輸液に希釈して用いる場合があります。
輸液には、水分やミネラル、ブドウ糖などさまざまな成分を含むものがあり、下痢(げり)や嘔吐(おうと)、熱中症による脱水状態の改善などを目的とした電解質輸液と、食事がとれない時の栄養補給に用いられる輸液があります。栄養補給の点滴では、人の生活に必要な三大栄養素をそれぞれの材料となる成分に置き換えて点滴しています。
点滴はどこに打ちますか
一般的には腕の静脈内に注射針を挿入します。これは末梢静脈(まっしょうじょうみゃく)点滴と呼ばれ、30分から数時間程度と比較的短い時間で終了する点滴です。これに対してカテーテルという医療用チューブを太い血管内に留置して行う投与方法があります。これは中心静脈点滴と呼ばれるもので、長時間にわたって栄養輸液を点滴する場合などに用いられます。
末梢静脈点滴で気をつけなければならないのは、血管から点滴が漏れてしまうことです。抗がん剤の点滴を行う場合には、血管から薬液が漏れると周辺の組織を害してしまう危険があるので、特に注意が必要です。一方、中心静脈点滴ではカテーテルという異物を長時間体内に留置するので、感染症に気をつけなければなりません。
点滴はどのように変わってきているのでしょうか
当院では栄養補給を目的とした中心静脈輸液の使用量は徐々に減っています。やはり口から栄養をとるのが人にとって自然ですから、できるだけ早く口から栄養がとれるようなケアが行われるようになってきたからです。一方、水分、電解質の供給を目的とした末梢静脈輸液は、手術の場合などに用いられており、使用量は増加傾向にあります。
次に点滴に用いる輸液製剤にも変化が見られています。栄養補給を目的とした輸液は薬剤師が各種栄養成分を混合していましたが、最近は一つの輸液バッグにいくつかの成分が同封されており、使う時に仕切り部分を開通させて混ぜ合わせるものが登場しています。当院では点滴の調製は薬剤部の無菌室で行っていますが、薬剤師のいない病院でも安全、簡便に清潔な点滴の調製を行うことができます。災害の時など、清潔な環境を確保できない場合にも有用かもしれません。