第15話「塗り薬(軟膏(なんこう))」
「軟膏」とはどういう薬でしょうか
「軟膏」という名称は皮膚に塗る薬としてよく使われますが、医療現場では、軟膏剤や液剤などに分類されます。今回紹介する「軟膏剤」は、さらに軟膏とクリームに大別されます。これらは「主成分」と「基剤」に分けることができ、基剤は皮膚への吸収を向上させたり、皮膚病変部の保護・冷却などの効果、薬効成分を均一に分散させるなど文字通り「基」となるものです。この基剤に水分を含んでいないものを軟膏、水分を含んでいるものをクリームと呼びます。軟膏はベトベトした肌触りですが、水で落ちにくく、傷口にしみにくいのが特徴です。一方、クリームは水分になじむため、しっとりとした使用感ですが、軟膏より水に流れやすく、傷口に塗るとしみることがあります。
塗る量はどのくらいがよいのでしょうか
炎症やかゆみを抑える塗り薬にはステロイドという成分が含まれている事が多く、この薬を例にすると、日本アレルギー学会が推奨している「FTU(Finger Tip Unit)」という単位があります。1FTUは5mm口径のチューブ(容量が25gのチューブ)を人差し指の先端から第1関節まで一直線に出した量(約0.5g)で、これを両手のひらに塗るとちょうどよいとされています。意外と塗る量が多いと感じられる方が多いのではないでしょうか。ただし、皮膚の状態により塗る量は異なるため、初めて塗るときには医師や薬剤師に使用量を確認することをおすすめします。
また、乾燥した肌に塗る保湿剤は、たっぷりと塗ることでより効果が期待できます。
塗り方について教えてください
保湿剤や鎮痛・消炎剤の場合は、擦り込むようにマッサージする感じで塗ってください。また、保湿剤は1日1回よりは2回、3回と塗る回数を増やす方法が効果的です。他の塗り薬の中には、むやみに回数を増やすと副作用が生じる可能性が高くなるものもあります。それぞれの薬の使い方をよく確認してください。
複数の塗り薬を使用する際に医師から塗る順序を指示されていない場合には、広範囲に塗る薬を最初に使い、最後に局所的に塗る薬へと範囲を狭めるように塗ると効果的です。順序が逆になると、局所的に効かせたい塗り薬が後から塗る薬によって広がってしまいます。
ステロイドを含む塗り薬には、不適切に使用し続けると皮膚が薄くなり、血管が浮いて見えるなどの副作用があらわれることがあります。また、局所の免疫作用を下げてしまうので、傷口に塗ると感染しやすくなる危険もあります。同じ効果の塗り薬でも、使用する部位や症状によって使い分けが必要です。軟膏は薬局、薬店でも販売されていますが、可能な限り薬剤師と使用されるご自身の相談の上、購入されることが大切です。