第16話「睡眠薬」
睡眠薬にはどのようなものがあるのでしょうか
睡眠薬は睡眠障害のタイプに応じて処方されます。睡眠障害には、(1)なかなか寝付けない入眠障害、(2)夜中に目覚めて寝付けなくなる中途覚醒、(3)朝早く目覚め二度寝ができなくなる早朝覚醒、(4)眠りが浅く睡眠の実感のない熟眠障害といった種類があります。病院で一般的に使われる睡眠薬は、作用時間が2〜4時間の超短時間作用型、6〜10時間の短時間作用型、20〜30時間の中間作用型、50〜100時間の長時間作用型に分けられています。なかなか寝付けない入眠障害には超短時間作用型や短時間作用型と、睡眠障害のタイプによって薬を使い分けます。
病院の薬と市販の薬は違いますか
病院で一般的に使われている睡眠薬はベンゾジアゼピン受容体作動薬という薬で、脳の興奮を抑えることによって眠りを促すものです。かつてはバルビツール酸系の睡眠薬が使われていました。これには深刻な副作用があり、大量服用により痛ましい事故を起こすこともありましたが、現在では睡眠薬としてはほとんど使われていません。最近になって自然な眠りを促すメラトニン受容体作動薬、脳の覚醒維持に働く神経伝達物質を抑えるオレキシン受容体拮抗薬といった薬も登場してきています。
市販の睡眠薬はジフェンヒドラミンという成分が使われており、病院のものとは異なります。かぜ薬などには眠くなる副作用のあるものがありますが、この薬はそうした眠くなる副作用を利用したもので、すべての人に眠りを促すものではありません。
副作用についてはいかがでしょうか
筋肉に力が入らなくなってふらつきや転倒を起こすことがあります。また日中にも効果が残り、だるさや眠気をきたすことや、まれに睡眠薬を飲んでから眠るまでの記憶がなくなることもあります。これらの副作用はアルコールによって強められることがありますので、寝酒はおすすめできません。自己判断で薬を急にやめた場合に、離脱症状といって不眠や強い不安に襲われる場合があります。
現在、日本人の3割が不眠に悩まされていると言われています。睡眠薬は手にすることの多い薬ですが、医療者とコミュニケーションを取って適切な処方を受けていれば、必要以上に恐れることのない薬です。また不眠の解消には、薬だけではなく生活習慣の見直しも有効な方法です。不眠に悩んでいるならば、適切な医療機関の医師と相談することで安全な方法で不眠と向き合うことができると思います。