早期体験実習とは?(札幌医科大学:医学概論)
医学部1年生に対して行われる病院実習のこと。つい1年前まで受験勉強をしていた医学部学生が対象となる。大学での講義ばかりだと、ともすると「立派な医師になろう」という最初の動機づけが薄れることもあり得る。そうならないうちに臨床の現場を早く体験してもらうということであり "early exposure" とも言われる。
医学部卒業後に医師として貢献するためには、単に医学的知識や技術を身につけるだけでは不十分である。医療職に求められる多角的能力の必要性を理解させることが目標となる。
実習要綱からの抜粋
医師に求められる多角的能力とは
- 医師の日常の活動や役割に関わってくる基本となる能力・知識・技能・思考・行動の組み合わせ
- 患者からみた望ましい医療人像
- 職務上、期待される業績を安定的に・継続的に達成している人材に、一貫してみられる行動・態度・思考・判断などにおける傾向や特性
この実習は札幌医科大学(平成22年度)の場合、医学概論のなかで行なわれ、2つのテーマがある。
(1) 医師に求められる多角的能力の理解
- 事前講義:医師に求められる多角的能力について
- グループワーク(実習計画の立案)
学生が設定した実習目標・課題について、実習施設ごとにプレゼン - 早期体験実習(1日):医師業務への同行
- 実習報告会:実習の報告および討論と総括
(2) チーム医療に求められる多角的能力の理解
- 事前講義:チーム医療に求められる多角的能力について
- 早期体験実習(1日):医師以外の医療職業務への同行
- 実習報告会:実習の報告および討論と総括
実習内容
学生は実習先が決まったら事前に文献やインターネットなどで病院などの下調べを行ない、各自の実習目標・目的を明確にしておく。実習先施設の医師等への随行(シャドウイング)にて、出勤から退勤までのすべての業務を観察する。例えば・・・
- 診療(患者との対応)
- 医局での同僚との会話
- 学会等のスライドの準備
- 院内会議または看護室での同僚との打ち合わせなど
- 論文研究など
実習を受けた側の感想
今年で2回目の受け入れでした。学生には、まさしく 「トイレ以外」 はべったりと貼り付かれました。後で実習要綱を見て驚いたこと。こんな多角的能力は自分にはあるのか?これでは、医師としての人間像を査察されているようなものです。
事前講義のおかげもあるのか、学生は目的意識を持ち実に真面目です。あとでちゃんと丁寧な礼状も届きました。想像していた以上に医師の1日は忙しいという感想だったり、医師がチーム医療の中で取るべき役割を学びましたとの感想もありました。
社交辞令は多分にあるにせよ、何人かの未来ある医学生に直接的な(学問以外の)影響を与えることができたようで何よりです。頂いた礼状は、ちょっとした「お宝」となっております。