抑制しないケアの実際(医療療養病棟)(2025.1.20UP)
パーキンソン病患者さんは、不随運動の出現により生活が不自由になることがあります。しかし、自分のペースで出来る限り自由に過ごしたいと思う患者さんは少なくありません。 今回紹介するのは、不随意運動の影響で手元にあるものが落下してしまい、落ちた物を拾い上げる動作の最中に尻もちを付いたり、車いすにうまく腰掛けられず転倒につながっていた患者さんのベッド周囲の環境整備の工夫についてです。
何か特別な工夫を行っているわけではありませんが、患者さんの現在の機能で可能な動作、行動についてリハビリスタッフと相談し環境を整えることを心がけています。
抑制しないケアの実際:障害者病棟(2025.1.20UP)
胃瘻造設後、療養目的で当院に入院された患者さんです。前医入院中は、胃瘻に触れる動作が見られたため、自己抜去防止の目的で両手にミトンを着用していました。当院入院後は、ナースステーションに近い病室で、患者の行動観察を行っていましたが、胃瘻に触れることなく過ごすことができています。しかし、意図せず患者さんが胃瘻に触れた際、疼痛や不快感が出現したり、異物と思い無理に引っ張ろうとするなどの動作につながらないよう、胃瘻を保護するような固定を工夫しています。(画像1~4参照)
経管栄養の投与時間は1時間程度とし、車いすに乗車した状態で実施しています。投与中、栄養剤や栄養チューブは患者さんの目に触れない位置に置き、好みの本を読むなど、患者さんの気持ちが経管栄養に向かない環境を整え過ごしています。(画像5参照)
【胃瘻挿入部の保護】
ボタンタイプの胃瘻を挿入。胃瘻チューブと皮膚の間にYガーゼを入れ、直接皮膚に触れないようにする。
指などが入らないよう、4つ折りガーゼ上部1/2程度の範囲(赤枠)を透明フィルムドレッシング剤で隙間なく固定する。
4つ折りガーゼの下部1/2程度の範囲(青枠)は、チューブ接続時にガーゼの開閉が容易にできるよう絆創膏で固定。
栄養剤の接続が完了したら、挿入部はガーゼで保護する。
栄養剤投与中の患者の様子
抑制しないケアの実際(医療療養病棟)(2024.12.09UP)
経鼻胃管での経腸栄養を行っている患者さんです。疾患の影響により右上・下肢に麻痺がありますが、左上・下肢の動きは活発でした。また、自身での危険察知、回避は困難な状況があり、自己抜去予防のため左上肢の拘束が行われていました。
当院入院後、患者さんの身体状況等をアセスメントした結果、意図的な自己抜去ではなく、無意識的に左上肢を動かすことで胃管に触れて誤抜去につながるのではないかと考えました。そこで、安全な栄養投与の方法として、左上肢から胃管までの距離を確保、胃管に触れにくい環境を作るため、右鼻腔に胃管を挿入し、栄養剤も患者の右側に設置することにしました。また、胃管の固定は可能な限り隙間をなくすよう工夫しました。(下記【胃管固定方法】参照)
これらの対応を徹底したことで、胃管を自己抜去すること無く過ごすことができています。
また、左上・下肢の動作時、力の加減ができていなかったため、ベッド柵に強打することによる外傷予防としてクッション性のあるベッド柵カバーで保護を行っています。(画像1参照)普段はご自身の右手を掴んで過ごしていることが多いのですが、左上肢の機能を刺激できるような方法がないか、認知症サポートチーム(DST)に相談し、マスコットが多数ついた「認知症マフ」を進められました(画像2)。マフの内側にマスコットが付いているため、手を入れると自然とマスコットに触れることができます。時にはつけていたはずのマフが振り飛ばされていたり、マフをつけたまま自身の右手を握っていることもありますが、何かしら患者さんの刺激になればと信じてケアしています。
【胃管固定方法】※シミュレーターによる再現のため左鼻腔に挿入しています
胃管で鼻腔を圧迫しないよう下方に向かって固定する
胃管部分はΩ(オメガ)止を行い、皮膚との接触を避ける
胃管の浮き上がり部分に指が入り込まないようフィルムドレッシングでカバーする
抑制しないケアの実際:障害者病棟(2024.06.21UP)
私たちの病棟は、さまざまな疾患の方が入院されています。その中には、認知症の患者さんも多く、慣れない環境での生活に混乱する方もいます。そのため、患者さんの混乱ができるだけ短期間で改善するよう、リハビリテーションスタッフと協力しケアを提供しています。『その方にとっての楽しみは何か』『安全に過ごしてもらうために何ができるか』など患者さん個々の背景を考慮した活動を検討し実践しています。特に、『集団リハビリ』『院内デイケアでの活動』を積極的に取り入れ、昼間は活動し夜間は休息することができるようにしています。患者さん同士協力しながら『ちぎり絵』や『塗り絵』などを制作している時間は、患者さんの笑顔も多く見られ、楽しい時間が過ごせているなと感じます。
抑制しないケアの実際:障害者病棟(2024.06.21UP)
当院に入院する以前は、栄養カテーテル(経鼻胃管)の自己抜去を防ぐため身体拘束を行っていた患者さんでした。
当院入院後は、カテーテルの視認を避けるためマスクを着用してもらうようにしました。
時折、マスクを気にして触れることはありますが、カテーテルに触れることはありません。
また、手持無沙汰になり、カテーテルに気持ちが向いてしうことが無いよう、『認知症マフ』を使用しました。認知症マフに付いている飾りに楽しく手で触れることで、カテーテルからの意識を遠ざけることができているように感じます。
このように、患者さんの自由をそこなわず、カテーテル以外のものに興味が向くような工夫をしながら日々見守っています。
※認知症マフとは:認知症特有の症状から手元に不安を感じる人が触れたり手を通したりして落ち着けるように、さまざまな飾りを縫いつけた円柱型のニット小物(朝日新聞厚生文化事業団HP参照)