神経内科総合医療センター
09 外眼筋の最大効果
09 眼球運動の基礎(1)
作用が最大に発揮される動き方:それぞれの外眼筋の作用
図1
便宜的に眼球の軸を図1のように定義します。これは3DCGアプリでよく使われる3次元軸です。眼球を真球と考えて、中心を水平に貫く軸がX軸、垂直に貫く軸がY軸、前後に貫く軸がZ軸です。
図2
上眼瞼挙筋は略して眼球に付着する筋のみを示します。直筋群はすべて眼窩の奥に収束するため眼球を後方に引っ張ります。上斜筋は滑車により方向を変えて眼窩の奥に伸びますが、考え方としては下斜筋と同じように眼球を前方に引っ張ります。直筋群は眼球の中心より少し前、斜筋群は中心より少し後ろに付着します。
図3
上直筋および下直筋は眼球のZ軸から23度だけ傾いた角度で眼球の中心より少し前に付着しています。上斜筋と下斜筋は眼球のZ軸(前後)から51度だけ傾いた角度で眼球の中心より少し後に付着しています。これらの角度と付着位置が重要です。この後の図で示しますが、外直筋の作用により眼球を外引き23度にした時、上直筋と下直筋の作用が最大に発揮されます。同じ理屈で、内直筋の作用により眼球を内引き51度にすると、上斜筋と下斜筋の作用が最大に発揮されます。
図4
これ以降の図は右眼球についてです。正面を見た時の模式図です。眼球への筋の付着部を分かり易く描いたものです。正面、上面(図の上)、外側面(図の左側)、内側面(図の右側)から見たものです。
図5
外直筋の作用により右眼球を外引き23度に固定します。この眼位で上から見た時に上直筋も下直筋も眼球の中心を通ります。そのため余計なベクトルを考えることなく、上直筋と下直筋の作用が最大になります。
図6
図7
外引き23度を保ったまま、下直筋が働いたところです。
図8
内直筋の作用により右眼球を内引き51度に固定します。この眼位で上から見た時に上斜筋も下斜筋も眼球の中心を通ります。そのため余計なベクトルを考えることなく、上斜筋と下斜筋の作用が最大になります。
図9
内引き51度を保ったまま、上斜筋が働いたところです。
図10
内引き51度を保ったまま、下斜筋が働いたところです。
図11
以上をまとめると図11のようになります。外引き眼位(23度)で最大能力を示すのは、上が上直筋、下が下直筋です。内引き眼位(51度)で最大能力を示すのは、上が下斜筋、下が上斜筋です。これらの原理により、単独筋の弱いところをチェックしたい時には、内引き眼位で上下方向、外引き眼位で上下方向を調べます。一番弱い筋の推定については、レッドグラス・テストにおいて白玉と赤球が一番離れている所を採用します。
文責:小林信義